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DSD再生の強化にバランス対応――ティアック「UD-503」の進化に迫る!魅惑のバランス駆動(1/4 ページ)

» 2015年06月10日 17時38分 公開
[山本敦ITmedia]
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 ティアックからハイレゾ対応のヘッドフォンアンプ内蔵USB-DAC「UD-503」が発表された。春のヘッドフォン祭でお披露目された新製品の中でも取り分け注目を浴びた本機は、人気の高い“Reference 501”シリーズのDAコンバーター「UD-501」の上位に連なるモデルであり、ティアックの高音質技術をA4のコンパクトサイズに凝縮している。本機の魅力をひもといていこう。

ティアックから発表された期待の新製品「UD-503」を一足早く徹底試聴した。15万円前後

A4サイズに凝縮されたティアック・グループの先進オーディオ技術

 まずはDAコンバーター部だ。中核のDAコンバーターチップは「UD-501」で使われていたバーブラウンの「PCM1795」から、旭化成エレクトロニクス製の11.2MHz DSDやリニアPCMの384kHz/32bitのネイティブ再生に対応する「AK4490」に変更された。

 ティアック・ブランドの製品に旭化成エレクトロニクスのDACチップが使われる機会はこれが初めてだが、同じティアック・グループのブランドであるエソテリックやタスカムでは、長らくその高い音質が評価され、主にハイエンドクラスのモデルに採用されてきた実績がある。ティアックのグループ内ではエンジニアどうしの活発な交流があることから、今回旭化成エレクトロニクスの製品が採用されたというわけだ。

精悍なフロントパネル。カラーバリエーションはシルバーとブラックの2色で、本体の横幅寸法は290ミリとReference 501シリーズにそろえている

 ティアックの開発担当者に新しいICを選択した決め手をうかがったところ、「バーブラウンのチップも決して悪いわけではないが、旭化成エレクトロニクスのチップの方がより柔軟にカスタムチューニングができたことや、リアルなテクスチャの再現性、演奏のイメージがビジュアルで浮かんでくるようなキャラクターがUD-503のコンセプトに合致していた」とコメントしていた。旭化成エレクトロニクスのDACチップは、特にハイエンドのエソテリックではSACDプレーヤー「K-07X」「K-05X」をはじめさまざまなモデルに使われてきたことから、既に“味付け”のレシピが完成していたことも採用を後押ししたはずだ。同じ日本国内のメーカーだからこそ、開発の過程でスムーズにコミュニケーションが取れ、結果として狙った方向に音を追い込みやすいこともエンジニアにとっては大きなアドバンテージになる。

デスクトップに設置しやすいA4サイズの筐体。金属シャーシを両側から包み込む8ミリ厚のアルミパネルを採用するデザインが特徴的だ

 UD-501も、DSDは5.6MHzまで、リニアPCMも384kHz/32bitまでのネイティブ再生に対応していたが、UD-503ではDSD再生が11.2MHz対応に強化されている。一般的にはソースのサンプリング周波数が高くなるほどノイズの制御も難しくなってくるものだが、ティアックには長年培ってきたDSDの高品位再生に関連する膨大なノウハウの蓄積がある。UD-503の開発スタッフの中には、タスカムのDSDマスターレコーダー「DV-RA1000」を手がけたエンジニアも参加しているそうだ。DSDの扱いを熟知した、まさにベテランの“料理人”が加わったことで、より安定感の高いDSD再生を実現していることも新製品の特徴だ。

DSD再生は11.2MHzのネイティブ再生まで対応。もちろん5.6MHz、2.6MHzの音源も楽しめる

 オーディオ回路はUD-501と同じデュアルモノラル構成として、左右チャンネルの信号干渉を徹底して防ぐ設計を採用。DAコンバーターからアナログ出力段までに止まらず、電源部から左右チャンネルのソースをアイソレートして、ピュアな音楽再生に注力しているところがいかにもティアックらしい。そもそも音楽ソースは左右チャンネルに異なる信号が収録されているため、使われる電源の左右のバランスは再生中にもリアルタイムに可変している。

 ところが元の電源部が1つだと、片側のチャンネルに大きな電流を流したときにフィードバックの影響が発生してしまい、結果として左右チャンネル間にクロストーク干渉が起きてしまう。だから電源部を左右で分けることが、高音質再生に重要な意味を持つという理屈だ。そもそもハイエンドオーディオでは当たり前のように採用されきたこのコンセプトを、A4サイズのコンポーネントで実践してしまった所に、ティアックの本気度の高さが伝わってくる。さらに電源部にはUD-501に搭載したものよりも安定性の高いトロイダルコア電源トランスを選び直して、左右チャンネルのセパレーションをさらに磨き上げている。

 UD-503にはエソテリック・ブランドのノウハウから生まれた、電流伝送能力を強化した出力バッファアンプ回路「TEAC HCLD(Hight Current Line Driver)」を搭載。バッファーアンプ回路は左右チャンネルのプラス極(ホット)/マイナス極(コールド)にそれぞれ1基ずつ、合わせて4基を搭載。フロントパネルには標準(TRSフォン)ジャックを2基備え、TEAC HCLD回路をヘッドフォン出力時にも使うことで、バランス駆動に対応するヘッドフォンをつないで一層高品位な音楽再生が楽しめる。

 バランス出力時は4基のアンプを活かしたディファレンシャル(差動)駆動となるが、一般的なアンバランス対応のヘッドフォンをつないだ場合も、片側のチャンネルを2基のアンプで動かすパラレル(並列)駆動に対応したことで、よりパワフルでダイナミックなサウンドが楽しめる。アンプはAB級の動作を基本としているが、実用帯域ではほぼA級動作としたことで音質向上も図った。600オーム級のハイインピーダンス仕様のヘッドフォンも余裕を持ってドライブする。通常A級動作のアンプ回路は発熱処理が難しいため、特にコンパクトな筐体の機器に採用されることは少ないが、本機の場合は回路に発熱の少ないパーツを使いながら、シャーシをメタル素材として放熱効果を高めている。実際にハイレゾ音源を長時間聴いていても筐体(きょうたい)が過度に熱を持つことはなかった。

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