「4K」というキーワードも、最近ではごく自然に聞くようになってきた。同分野で先行していた国内メーカーだが、すでに海外メーカーもキャッチアップしており、4Kそのものでの差別化は難しい状態になりつつある。そんな状況下、IFAではパナソニックと並んで数少ないAV関連の展示を続けるソニーは、どのような戦略を描いているのだろうか。IFA前日に開催されたプレスカンファレンスでの発表内容と実際の展示を比較しつつ、そのあたりを考えてみる。
今回のプレスカンファレンスでソニー代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏の説明を聞いて印象的だったのが、4Kテレビにおけるデザイン性に強く言及していたことだ。4Kテレビはその性質上、50型以上のラインアップが中心になるなど、日本のユーザーからみれば比較的“大きい”サイズとなる。つまりそれだけ部屋における設置スペースが大きくなり、否が応でも自己主張が強くなる。フレームレスデザインやスタンド形状など、各社が大型液晶テレビにおいて特にデザイン面に言及する理由の1つだ。
最新ラインアップの「X90C」(海外モデル、日本ではX9000Cシリーズに相当)では、超薄型筐体が特徴となっており、通常のスタンドによる床やテーブルへの設置のほか、壁掛けにしても違和感なく設置可能な点を平井氏は強調している。ブースでの展示もこの点を強調すべく横一列に4枚のテレビを並べた状態で設置されており、来場者らが薄さを確認すべく何度もテレビの前後を往復している様子がうかがえた。また壁掛け設置が最初から考慮されているため、専用ブラケットが標準添付されている点も特徴だ。その薄さにより壁面近くまでディスプレイ面を寄せることができるため、壁から浮き出るような違和感は少ない。また薄型筐体とはいっても下側に重心があり、全体でバランスがとられているため、スタンドを使って床に設置した場合に地震などで倒れることもないという。
またソニーの説明員の話によれば、日本ではスピーカー内蔵型が好まれるため、ハイレゾ対応テレビにあるようにスピーカーを左右に配置したモデルが投入されているが、欧州ではサウンドバー文化のほうが中心とのことで、なるべくフレームの面積を減らしたスリムなデザインが好まれるという。テレビを隙間を空けずにくっつけて大量展示しているのも、こうした志向を反映したものだと考えられる。
ただ現状において、4Kテレビはコンテンツ不足という問題がある。地上波テレビやBlu-ray Discのようなパッケージメディアではまだ4Kコンテンツが提供されておらず、そうしたソースを見る場合はアップコンバートが主流だ。一方で、「NETFLIX」をはじめとするオンラインで動画ストリーミング配信を行っている事業者らは4Kコンテンツの提供をスタートしており、ソニーは今回「Amazon Video」との提携を発表した。
4Kネイティブコンテンツは今後も少しずつ増加していくと考えられるが、ここで他社との差別化で重要となるのが映像技術だ。現在、4Kに関して「High Dynamic Range」(HDR)という技術の導入が進んでおり、間もなく規格化されるUltra HD BDでの標準技術として採用される見込み。HDRでは色の深度や空間の拡張が行われ、これまではBD化や配信時に“丸め”られてしまっていた色の階調表現がより豊かとなり、例えば暗所のディテールの再現や、鮮やかな色はさらに鮮やかに表示することが可能となる。そのあたりは実際のサンプルを比較すると明らかだ。
ソニーでは「X-tended Dynamic Range Pro」という技術で映像のダイナミックレンジを拡大し、HDRコンテンツの登場を待ち構えている。ただし、HDRは未だ規格が複数存在しており、実際に視聴するときにはファームウェアアップデートが前提になる。このほか、HDR実現にあたって従来の方式に比べて2〜3割ほどデータ量が増加することもハードルになるかもしれない。このあたりの状況を見極めつつHDR対応製品を検討に入れるといいだろう。
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