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この秋、注目の2アイテム――ヤマハ「CX-A5100」とソニー「CAS-1」を聴く山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/3 ページ)

» 2015年09月29日 12時21分 公開
[山本浩司ITmedia]

Dolby AtmosタイトルでシネマDSP掛け合わせの効果を検証

 実際にDolby Atmos収録された映画Blu-ray DiscのいくつかをシネマDSP HD3との掛け合わせで再生してみたが、これが実に面白かった。Dolby Atmosの3次元立体音響がいっそうエキスパンドされ、壁と天井が取り払われたかのようなスケール感豊かな映画音響が楽しめるようになるのだ。

「アメリカン・スナイパー」。販売元はワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント。参考価格は4093円

 クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」では、シネマDSPの「Drama」モードを掛け合わせてみたが、戦場の兵士たちの声に好ましい控えめな響きが付くと同時に銃撃音の軌道がダイナミックに描かれ、Dolby Atmosのネイティブ再生に比べて戦場の緊迫感がよりいっそう増す手応えが得られた。あたかも映画音響の最終ミキシングを行う映画館を模したダビングシアターでその音を体験しているかのような雰囲気が味わえたのである。

 ウォシャウスキー姉弟監督作の「ジュピター」は、シネマDSPの「Adventure」と掛け合わせてみたが、これがピタリとはまった。宇宙空間を疾走するスペースシップや無重力ブーツを駆使したシカゴでの空中バトル・シーンなど、まさに壁と天井が取り払われたかのような雄大な音場空間が現出する。荒唐無稽なお話ながら、本機のサウンドデザインの見事さを実感することで、本作の世界観に共鳴できるようになるのだから、ドルビーアトモス+シネマDSP再生の意義は大きい。

 本機の開発担当者に聞くと、ドルビーアトモスとの掛け合わせを前提にシネマDSPプログラムのアルゴリズムを全面的に見直し、とくに低音の処理に留意したという。さまざまなDolby Atmos作品をチェックしてみると、トップスピーカーに強力な低音を伴ったオブジェクトが振り分けられるケースが多いことが分かる。メインスピーカーに比べて低音再生能力の劣るモデルがトップスピーカーに配されることが多いことが想定されるが、そんなシステム構成でも最良の音が楽しめるように、トップスピーカーに過剰な低音が振り分けられないように配慮してアルゴリズムを練り上げていったという。

 Dolby Atmos対応モデルは、通常の5.1ch/7.1chコンテンツをアップミックスしてトップスピーカーを生かす「ドルビーサラウンド」モードを搭載することが義務づけられているが、本機はドルビーサラウンドとシネマDSPの掛け合わせはできない。ドルビーサラウンドのアップミックス効果がとても優秀なので、このモードにシネマDSP を加える意義が認められなかったというのがその主な理由だそう。トップスピーカーを配置したユーザーは、ドルビーサラウンド・モードかシネマDSPプログラムのどちらかを選ぶことができるわけだ。

米国盤BD「WHIPLASH」

 垂直方向の音場の広がりをうまく活用した映画Blu-ray Discの「フューリー」や米国盤BDの「セッション」(原題:WHIPLASH)で両者を聴き比べてみたが、この比較も興味深かった。ドルビーサラウンドの精密で研ぎ澄まされた印象の音場表現に対して、シネマDSPの「Drama」「Adventure」などのモードは、よりケレン味たっぷりのメリハリとの効いた音場表現となる。ドルビーサラウンド、シネマDSP のどちらを選んでも、映画館を超える生々しい三次元シネソニックが楽しめることは間違いないだろう。

 また天井にスピーカーを直接取り付けたトップフロント&トップリア配置とメインスピーカーとサラウンドスピーカー上方の壁に取り付けたフロントハイト&リアハイト配置のパフォーマンスの違いも試してみたが、予想以上に後者のフロントハイト&リアハイト配置の音場感が好ましかった。リスニングポイントとの距離が十分に取れるメリットか、トップフロント&トップリア配置以上に再生空間の広がりが実感できるのである。部屋の美観を損ねずに天井にトップスピーカーを取り付ける難しさを前に、ドルビーアトモス再生に対して二の足を踏んでいるAVファンは多いと思うが、フロントハイト&リアハイト配置ならばリスニングポイント前面と背面の壁にスピーカーを取り付ければよいわけで、設置条件のハードルは俄然低くなるはず。ただしこの場合は、できることならフロントハイト/リアハイトともに同一スピーカーでそろえ、リスニングポイントに対して左右対称に、シンメトリカル配置するのが重要なポイントであることを付け加えておこう。

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