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古い技術を使った新しいアプローチ――世界初のコンデンサー型イヤフォン、シュア「KSE1500」が生まれるまできっかけは“変なもの”(1/3 ページ)

» 2015年10月22日 21時32分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 シュアは10月22日、世界初となるポータブルのコンデンサー型イヤフォンシステム「KSE1500」など3つの新製品を発表した。「KSE1500」は、開発と市場調査におよそ8年間を費やしたという力作だ。24日と25日に開催される「秋のヘッドフォン祭2015」を見据え、世界に先駆けて日本で初披露した。

世界初となるポータブルのコンデンサー型イヤフォンシステム「KSE1500」


 Shureは、バランスド・アーマチュア型(以下、BA型)ドライバーがまだ一般的ではなかった1995年からBA型トランスデューサーの研究を開始し、デュアルドライバーの「E5」とトリプルドライバーの「SE530」を皮切りに数々のマルチドライバー製品を販売してきた。2013年夏には、BA型ドライバー4基を搭載したフラグシップモデル「SE846」を発売。BA型マルチドライバーの先駆者といえる。

 しかし開発の現場では、マルチドライバー以外のアプローチも検討されてきた。Shureでコンシューマープロダクトのカテゴリーティレクターを務めるマット・エングストローム氏は、「SE846は4年の歳月を費やして開発したベストなマルチドライバー製品だ。しかし、ドライバーの数が多いほど良い製品だとは必ずしもいえない。われわれは、そのことを常に念頭において製品を開発している」と話す。

Shureのイヤフォン/ヘッドフォン担当プロダクトマネージャー、ショーン・サリバン氏(左)とカテゴリーティレクターを務めるマット・エングストローム氏(右)

きっかけは“変なもの”

 彼らの新しいチャレンジは、「古いテクノロジーを使った新しいアプローチ」だった。Shureのイヤフォン/ヘッドフォン担当プロダクトマネージャー、ショーン・サリバン氏によると、きっかけは2007年にあるエンジニアが持ってきた“変なもの”。「小型のコンデンサーマイクロフォンの動きを逆にして音が出せるようにしたものだった。それを無理矢理、耳に入れたところ、それまでに聴いたことのない音を体験できた」(サリバン氏)。

写真中央の変なものが最初のプロトタイプ

 小さいが、仕組みとしては高級ヘッドフォンに用いられるコンデンサー型。とはいえ、コンデンサー型に対する一般的なイメージは、「音は良いが、大きくて専用アンプも必要なマニア向けの高級ヘッドフォン」だろう。サリバン氏は、「従来のコンデンサー型ヘッドフォンはドライバーが大きく、オープンバック型が一般的だ。またアンプとの接続に幅の広いリボンケーブルを使用したり、AC電源駆動だったりとセッティングの自由度も低い」と指摘する。

こちらはアンプのプロトタイプ

 それでも「変なもの」の音を聴いたサリバン氏は直感した。「製品化には確実に時間がかかる。しかし、時間がかかっても進める価値のあるプロダクトになる」(同氏)。エングストローム氏も当時を振り返り、「初期のプロトタイプはとても壊れやすかったが、そのサウンドクオリティーは無視できなかった」と話している。

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