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FitEar初のハイブリッド型カスタムイヤモニ「Air」はこうして生まれた秋のヘッドフォン祭2015(2/3 ページ)

» 2015年10月25日 00時41分 公開
[山本敦ITmedia]

 そこで「FitEar Air」では今回、ベントに代わる新しいアプローチとなる「ショートレッグシェル」を新規に開発した。その名が示す通り、通常のカスタムイヤーモニターよりも耳穴の中に納まるノズルを“短く”設計することで、気圧変化の幅を最小限に抑えながら、ダイナミック型振動板の動作規制を解消。同時に高い遮音性を維持することに成功した。

通常のカスタムイヤーモニターと、FitEar Airが採用するショートレッグシェルの比較

ショートレッグシェルにより内部レイアウトの制約が緩和され、音道となる穴の設定に自由度が高まるのだという

ショートレッグシェルのイヤモニの装着方法。耳穴外側への接触を利用して遮蔽性を犠牲にしない工夫を凝らした

 須山氏はこれまで、ハイブリッド型のイヤーモニターを実現するためにシュアの製品をベースに試作機を作ってみたり、独自に色々なトライアルにチャレンジしてきた。試作ベースではある程度音に納得がいくものを作ることができたとしても、それを次のステップとして「商品」のベースで形にしていく過程でもまた、新たな課題に出くわしたのだという。

 それは、優れたダイナミック型のドライバーを安定して調達することの難しさだった。須山氏は独自にさまざまなユニットを探し求めた結果、フォステクスカンパニーが開発したシングルフルレンジタイプの「382326」という9ミリのドライバーユニットに出会った。

 「密閉されたシェルの中に配置してみても、すごく良く音が鳴るほどユニットの素性が良好だった。そこでフォステクスカンパニーに繰り返しラブコールを送ったところ、フォステクスカンパニーの山口氏に出会い、協力を仰ぐことができた」と振り返る。

 記者会見にはゲストとしてフォステクスカンパニーの山口創司氏も参加し、同社のドライバーユニットの特徴についてコメントした。「ユニットのOEM事業も行っているフォステクスカンパニーでは、スマートフォンに同梱(どうこん)されるイヤフォンなど大量に生産して供給することも行っている。大量生産のビジネスモデルでは不良率を極限まで下げ、品質のブレを抑えることが非常にシビアに求められる。カスタムイヤーモニターのような超密閉空間では、左右の品質誤差も如実に表れてくる。そのため商品の品質管理には絶対の自信を持っている」

フォステクスカンパニーの山口氏

 今回「FitEar Air」に採用された9ミリのダイナミックドライバーについては、通常のダイナミックドライバーよりも密閉空間に搭載しても高音質が損なわれない点が大きな特徴であるという。「今回カスタムイヤーモニターの製作に声をかけてもらったことで、フォステクスのドライバーユニットの良いところや強みが新たに発見できた部分もあった」と山口氏。

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