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大切なのは“イタリアニティ”――デロンギのモノ作り哲学滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(3/5 ページ)

» 2015年11月11日 21時52分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 「確かにインターネットにより、地域差などが出し難い世の中になりつつあります。ただ、優れたデザインというのは各国、すべての国にトランスレートできるのは、実は今に始まったことではありません。だからこそ、自分の核というのは、デザイン面では保ちつつ、さまざまな形に変えられる柔軟性が大切ですし、ある意味デザインをオープンにしていないといけない時代ではないでしょうか。逆に、外の情報を見ずに自分だけの世界に閉じこもっていては、世の中に求められているデザインを作ることは難しいでしょう。われわれは、常にデザイントレンドを学んでいます。例えば、昨日はパリの展示会や展覧会に行きましたし、来週はロンドンに行きます。私だけではなくデザインチームのメンバーも同じです。また、デロンギはデザインの研究機関をロンドン、パリ、ミラノなどに持っているため、そこで分析した情報も常にチェックしています。私たちはそれをセレクトし、“イタリアニティ”にマッチするトレンドを取り入れるようにしています」

 また、日本では近年、住環境の変化でキッチンがリビングと1つになるキッチンのオープン化が著しい。そういった変化は世界的なものなのだろうか? また、それによるデザイン的な影響というのはあるのだろうか。

エスプレッソマシンだけでもこれだけのラインアップ。しかもこれがすべてではないというのは驚きだ。それぞれ搭載されている機能などに違いがある

 「住環境の変化はトレンドの変化、キッチンのオープン化は日本だけでく、世界中でそのトレンドは見受けられます。このため調理家電をデザインする際にも、以前よりインテリアとして使えるように色や仕上げに気を使ってます。以前なら1モデルしか作らなかったのに、カラバリを加えたりすることも増えました。例えば、日本では発売していない『キッチンシェフ』という製品。この製品のルックスはもともと機能美の強いものでしたが、これにもカラバリを作ったり。キッチンはその人のセンスを表すような空間で、調理家電自体も“人に見せたいもの”になっています。その傾向に合わせ、製品開発自体もかなり変わってきてますね」

デロンギにしては珍しい未来的デザインのマルチフライは、ポテトのほかさまざまな揚げ物を簡単に作れる

搭載する機能の緻密な調整方法

 一方、デロンギ製品といえばデザイン同様、プレミアム感を演出するのに質の高い機能や使い勝手が重要だ。それらを製品に入れ込むために、マーケティングリサーチは必須。また、デロンギグループとして3つのブランドが存在することもその強みに大きく影響しているという。ここでは同社のマーケティングディレクターであるパオラ・ボニー氏に聞いた。

デロンギのマーケティングディレクター、パオロ・ボニー氏

 デロンギの製品作りにとって重要なのが「ミッションを確認すること」というポニー氏。これはデロンギの製品開発にとっていわばベースとなる考え方だ。さらにスタイルとパフォーマンスのコンビネーション、つまり製品のバランスが大事になるという。

 「製品というのは私たちと常に生活を共にするもの。つまり、生活の一部であり、毎日目にするものです。生活は性能だけではなくスタイルも大事。それをふまえたうえで製品開発はどのように進めるか、インターナショナルなアプローチを検討します。イタリアだけではなく、各国のニーズをしっかりと見極め、それぞれの生活に配慮して開発を進めます」

 そして製品は、ブランドバリューを体現するものでなければならないという。「品質が大事です。品質は使いやすさ。使いやすさはパフォーマンスにつながります。信頼できるパフォーマンスがあることはもちろん、使っていて楽しいことも重要。革新性という言葉の代わりに、私たちは“スペシャル”という言葉を使います。特に製品を作る際に念頭においているのは、この製品がユーザーに“何か特別なこと”をちゃんと提供できるのかを考えます。デザインはデロンギにとって必要不可欠な要素であり、一言で表すならば、革新性。他社と差別化できる特色のあるデザインになっているかどうかを常に意識しています」

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