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大切なのは“イタリアニティ”――デロンギのモノ作り哲学滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/5 ページ)

» 2015年11月11日 21時52分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 デザインに注力しているコレクションライン「ディスティンタコレクション」はどうか?

ディスティンタコレクションのケトル。『スクエアクル』デザインはユニークの一言

 「グローバルに展開しようと決めたコレクションラインは、デロンギとして、最初にどのようなメッセージを込めるかを考えます。『ディスティンタコレクション』では、まさにこの考え方がミッションとして掲げられました。イタリアらしさ、つまりデロンギらしさであり、それは“イタリアニティ”。他社では出せないようなデロンギならではの特色、ユニークネスを出すことが絶対条件でした。そこで数年間に発売して世界的に成功しているコレクションライン『アイコナシリーズ』から、どう進化させるかを考えたのです」

アイコナシリーズ。古き良きイタリアのエッセンスが詰まっている世界的にヒットしたコレクションライン

 「アイコナシリーズ」は、優雅な曲線美、あでやかな光沢、古き良きイタリアのエッセンスが詰まったデレガントな小物調理家電シリーズである。フランチェスカ氏は、そこからどういう思考で「ディスティンタコレクション」のデザインにたどり着いたのだろうか?

 「まず『アイコナシリーズ』が、なぜ世界であれほど受け入れられたのかを細かく分析しました。さらに、新製品なので『アイコナシリーズ』にないデロンギらしい要素は何かと検討します。例えば『ディスティンタコレクション』のケトルに採用された『スクエアクル』デザインは、ここから生み出されました。スクエアクルデザインというのは、上部から見るとスクエア(四角)なのに底部はサークル(円形)になっているもの。ユニークなフォルムで、実は製造技術や量産技術などでは非常に高い技術力を求められるのですが、そこにあえてチャレンジすることがイノベーションです。デザイン哲学“イタリアニティ”をアウトプットするために妥協はしません。魅惑的な仕上がりにするため、メタルの素材ながらもマットな雰囲気を出せるように塗装を工夫するなど、最終的に『アイコナシリーズ』よりも一歩進んだユニークネスを強調することに成功しました」

 このように緻密にデザインを構築していくデロンギデザイナーたちは、本社があるトレヴィゾ周辺地域の出身者がほとんどであるという。それもイタリアニティを実現するために大切なことだとフランチェスカ氏は語る。

 「昔からこのあたりは工業デザインに強い地域で、職人など工業に携わる方が多く住んでいた土地柄です。デロンギの求める製造業への誇りを持つ人たちも多いのです。デザインというのは、その人の生き様がどうしても色濃く出るものです。もちろんそういった誇りの一部は、地域外から来た人にも教えられますが、デロンギらしいデザイン、つまり“真のイタリアニティ”というのは、頭で教えられることばかりではありません。何年もこの地域に住んで、個人のスキルや生き様、奥底にある価値観やセンスなどを何年も磨き上げることで、初めてイタリアニティは表現できるのです。だからこそ、この地域の文化や歴史などが、生まれもってDNAに刻まれている人がデザインすることが正しいと思っています」

オイルヒーターやコンパクトなファンヒーター、アイロン、スティック掃除機なども展開

 日本にも多くのデザイナーが存在する。そうした人々がデロンギ製品をデザインすれば、少なくともローカライズより大きな成功を収めそうなものだが、フランチェスカ氏は否定する。

 「確かに日本人にも素晴らしいデザイナーはたくさんいるのは知っています。でも、彼らのデザインするものは、おそらくわれわれの考えるイタリアニティではなく、違うデザイン言語などで評価されるべきだと思うんです。その逆も然りで、私たちが逆に日本のものをデザインしたら、それは素晴らしいデザインだったとしても、純粋な日本的デザインにはなりえないでしょう」

真剣にデザイン哲学について話すフランチェスカ氏。エレガントな雰囲気

 昨今、インターネットなどの影響により、情報の拡散性や速報性が高まり、地域差などが以前と比べると出にくい状況になりつつある。地域性や歴史などを非常に大切にするデロンギは、そのあたりをどのように考えているのだろうか。

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