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UHD BDはなくても史上最強! パナソニック「DMR-UBZ1」を使い倒す山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/3 ページ)

» 2015年12月17日 17時39分 公開
[山本浩司ITmedia]

 DMR-UBZ1開発担当者の話によると、画質調整項目を変更したときにクロマ超解像処理が入るくらいで、DMR-BZT9600とDMR-UBZ1のBlu-ray Disc再生時(4K アップコンバートを含む)の映像信号処理回路にほぼ違いはないという。しかしこれが実際に見比べてみるとずいぶん様子が違うのである。

「鑑定士と顔のない依頼人」。国内版の販売元はハピネット。参考価格は5184円

4Kカメラ収録のジュゼッペ・トルナトーレ監督の超高画質映画BD「鑑定士と顔のない依頼人」(1080/24p素材)で両モデルの画質を比較してみると、DMR-UBZ1の再生画質のほうが明らかにコントラストがついたように見え、ヴェールが1枚はがれた印象の高S/Nで見通しのよい映像が得られるのだ。主演女優の透き通るような美しいスキントーンの表現も、ぼくの目には断然DMR-UBZ1が好ましい。

 BD再生時の信号処理回路に大きな違いはないとのことなので、現行BDに比べて最高回転速度が高くなるUHD BD再生に照準を合せてドライブメカの精度向上やシャーシ剛性の強化などに注力し、制振対策を徹底したことが、DMR-BZT9600を上回るBD再生画質の実現に結実したのではないかと考えられる。

剛性の高いシャーシに精度を向上させたドライブメカを搭載

 この制振対策の徹底は、もちろん本機の高音質化にも寄与している。本機のXLRバランス出力を愛用中のオクターブのプリアンプ「Jubilee Pre」につないでCDを再生してその音を聴いてみたが、DMR-BZT9600以上に本格的なエネルギーバランスを訴求し、いっそう広々としたサウンドステージが実感できるのである。

 それでは……ということで、音のよさで定評のあるパイオニアのユニバーサルBDプレーヤー「BDP-LX88」とCD再生で比較してみたが、BDP-LX88の音の実在感やスケールの豊かさ、広大な音場描写力にDMR-UBZ1は歯が立たなかった。大容量の電源トランスを積んだ本格的なリニア電源回路など音質向上のためにBDP-LX88に注ぎ込まれた物量は圧倒的で、その差が正直に出た印象だ。

パイオニアの「BDP-LX88」。希望小売価格は27万8000円(税別)

 そんなわけで、パナソニックにもぜひBDP-LX88以上に物量を投入した超本格派の新世代ユニバーサルUHD BDプレーヤーをぜひ開発してほしいと思う。もっともDMR-UBZ1のHDMI出力の音は、けっして悪くないことは付け加えておきたい。アナログ出力と違って、BDP-LX88に限りなく迫る実力を有しているといっていい。

 さて、先述の通り市販のUHD BDの発売はまだだが、パナソニックが制作したUHD BDのデモディスク(非売品)をVPL-VW500ESで再生した印象も述べておこう。

 このデモディスクは、パナソニックの4Kカメラレコーダー「VARI CAM」で収録され、そのRaw DataをHDRグレーディングし、UHD BDとして仕上げたもの。HDMI2.0のハイスピード伝送(18Gbps)に対応したテレビ/プロジェクターにこの作品を映し出した場合は、4K/60p、HDR、BT.2020広色域、10bit階調表示が可能になるが、ハイスピード伝送とHDRに対応していないをVPL-VW500ESに映し出した場合は、4K/60p/SDR(スタンダード・ダイナミックレンジ)、BT.709色域、8bit表示となる。

 しかしここで注目すべきは、DMR-UBZ1にはをVPL-VW500ESのようなSDR仕様のテレビやプロジェクターでHDR ライクな映像が楽しめる調整項目が用意されていることだ。それが「ダイナミックレンジ変換調整機能」。0からプラスマイナス12まで調整可能で、マイナス方向に振っていくとハイライト(明部)の階調情報が豊かになり、プラス方向に振ると白ピークが伸びる代わりに飽和していき階調がつぶれていく。

 この作品の夕焼け時の雲を描写したシーンでこの調整機能を試してみた。マイナス4くらいにすると、0設定では見ることができなかった雲のディティールが明らかになることが分かったが、当然ながら画面全体の輝度が落ちて元気のない絵になってしまう。

 そこでふと思い出したのが、VPL-VW500ESのランプモードが<低>になっていたこと。ぼくの部屋の110インチ・スクリーンで現行BDを観る場合は<低>設定で十分な明るさが得られていたのだが、UHD BDで改善された明暗のダイナミックレンジを存分に表現するには<低>ではどうにもならないようだ。

 そんなわけで、ランプモードを<高>に変更し、DMR-UBZ1の画質調整項目の『明るさ』をプラス2に設定すると、太陽の光を受けた雲の輝きとディティールの表現が両立したHDRっぽい画質が実現できた。SDR表示機器に対するDMR-UBZ1のきめ細かな配慮におおいに感心させられた次第だ。

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