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は・じ・め・てのアナログレコード♪ ――ハイレゾ音源と比較してみた野村ケンジプロデュース(2/3 ページ)

» 2016年01月27日 10時00分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

針圧調整は忘れずに

 いよいよ調整に入る。“針圧調整”のため、まずシーソーのような構造になっているトーンアームを水平にする(=ゼロバランスをとる)。カウンターウエイトを少しずつまわしてバランスがとれる位置を探す。体の大きな福山が片手でアームを保持し、もう一方の手でウェイトを回していく。針が宙に浮いた状態で安定すれば成功だ。

 針圧とは、針が適切な力で盤面の溝をなぞれるよう、針にかかる圧力を調整すること。ゼロバランスをとってトーンアームが水平になっている状態から、カウンターウエイトの内側にある針圧調整用リングを回して調整していく。針圧はカートリッジごとに指定されているので説明書をチェック。TN-350に付属するカートリッジの適正針圧は1.4gだったので、目盛りを1.4に合わせた。

針圧って、そんなに重要なんですか?


針圧が高いと溝を削っちゃうし、逆に軽すぎると音を拾いきれない。針が跳ねて溝自体を傷つけることもある。貴重なレコードを傷つけないように必ず調整してほしい。今回は簡単だったけど、よりシビアに調整するなら「針圧計」があったほうがいい。


 野村氏が倉庫部屋から取り出してきたのは、ORBのデジタル針圧測定器「SFM-2」。本体から飛び出している部分に針を置くだけで針圧を0.1g単位で計測できるオーディオ専用の測定機で、照明を落としたリスニングルームでも使いやすいよう、横からLEDの光で照らしてくれたり、針先を載せる部分が鏡になっていたりする。1つあれば便利なアイテムだ。

ORBのデジタル針圧測定器「SFM-2」。価格は3万6000円(税別)

 最後にアンチスケーティングの調整を行う。回転するレコード盤は、遠心力でインフォースと呼ばれる“引っ張られる力”が発生するため、それを打ち消す仕組みを持っている。それがインサイドフォースキャンセラーあるいはアンチスケート、アンチスケーティングなどと呼ばれる機能だ。

設置作業完了

ハイレゾ音源とアナログレコードはどう違う?

 いよいよアナログレコードの試聴開始だ。試聴曲は野村ケンジ氏所蔵のNirvana(ニルヴァーナ)ベスト盤「ニルヴァーナ・ベスト」から「ユー・ノウ・ユー・アー・ライト」。試聴するレコードに合わせて回転数を切り替え、回り出したレコード盤に針を下ろす。

回転数は「33」(33 1/3回転)と「45」から選択

 緊張の面持ちで操作する福山。でも心配はいらない。TN-350の場合、油圧式の「トーンアームリフター」が付いていて、初心者が操作してもゆっくり静かに針を下ろしてくれる。

油圧式の「トーンアームリフター」

 音が流れ出した途端、2人に驚きの表情が浮かんだ。「正直、少し驚きました。レコードってこんなに音が良かったんだ、という気持ちです。なんとなくノイジーでかすれた音が出てくるようなイメージを持っていたんですが、まったく違いました」(山口)

よくテレビや映画でアナログっぽい雰囲気を出すためにノイジーな音を使うよね。そのイメージだと思うんだけど、実はあれ、フォノイコを使わないときの音。アナログレコード本来の音じゃない。


 続いてエンヤのアルバム「Dark Sky Island (Deluxe)」から「I Could Never Say Goodbye」、ツェッペリンの「ツェッペリンVI」から「Rock And Roll」と野村ケンジ氏の趣味全開。さらにアニソンカテゴリーから女性ボーカルが美しいカラフィナのオリジナルアルバム「far on the water」から「ビリーブ」。そしてAimer(エメ)の「DAWN」から「Brave Shine」。いずれもアニメ「Fate/stay night」タイアップ曲だ。

カラフィナのオリジナルアルバム「far on the water」

 1曲ごとに「e-onkyo music」や「mora」からダウンロードした同じ曲のハイレゾ音源と聴き比べる。ハイレゾ再生にはMacBook AirとラトックシステムのUSB DAC「RAL-24192DM1」を使用。かなりの高級モデルであるため、やや公正さを欠く、ハイレゾ有利な状況かもしれないが、それを差し引いても、両者の音色傾向の違いは顕著に現れてくる。同じスピーカーとアンプで聴き比べると、ハイレゾのほうが明らかにクリアでワイドレンジだ。

同じ曲をハイレゾ音源でも試聴する

 「改めてハイレゾ音源はすごいですね。アナログレコードと比べ、ベールを1枚はいだような気がしました。でも……」と続ける福山。「アナログレコードもすごいですね。輪郭はしっかりしてて、高音もくずれずにシャープ。とくに弦楽器の音の鳴り方が心地良いと感じました」。山口も「ハイレゾはすごく聴き慣れた感じですが、アナログレコードと聴き比べると楽器とボーカルが別の部屋でやってるような印象を受けました」(山口)。ハイレゾはクリアに聞こえる分、違和感を覚えるような部分も目立ちやすいのかもしれない。

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