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» 2016年01月28日 13時16分 公開

ソニーが「UHD Premium」に賛同しなかった理由麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/3 ページ)

[天野透,ITmedia]

麻倉氏:まず業界動向に関してからお話しましょう。取材では当然各出展社のブースへ行くのですが、そこで感じたのは「ブースは今見せられる限界しか出てこないため、業界動向の『表』しか表れない」ということです。ブースだけではなく、ディーラーへこの先1年を見せるための”スイート”(一般来場者には非公開の展示室、会場に近いホテルに設けられることが多い)へ行かないと、動向は全くつかめないですね。各社ブースの「裏」にあたるスイートまを見ると、革命的な新しいことが急激に起こっています。そういう細かなところに革新的な技術やトレンドが表れるのです。

 企業の経営を考える際、中長期戦略として立てられる「3カ年計画」というものを見ると、例えばある年の3年計画を立てたら、次の年は前年を踏まえて計画を発展させるといった様に、毎年リバイズしていきます。3年位先のビジョンを立てないと経営はできないということですが、これは企業だけに限った話ではなく、業界全体の動向を見た時もやはり同じです。

 これを踏まえてビジュアル業界を見てみましょう。業界の大きな幹は「情報量を増やす」というもので、昨年までは2Kから4K、8Kといった様に「解像度」という要素を拡張する3年計画でした。もちろん、これも現在進行形ですが、今年の3年計画にはズバリHDRという新たな要素の追加がハッキリと表れてきました。こういったトレンドは単年観察では分かりにくいですが、継続して定点観測していると把握できるのです。

――確かに昨年もHDRは話題に上がっていましたが、認知度はいまひとつだったように感じます

麻倉氏:後ほど取り上げますが、有機EL(OLED)も昨年に比較して地位を確固たるものにしていました。特にLGはOLEDに関する力の入れ方が昨年とは明らかに違っており、HDRの世界で見ても新しい地位を築き始めています。先ほどの言葉を使って表現するとOLEDは「今年から始まる3年計画」という様相を呈しています。

――OLEDは2015年に注目されましたね。やはりパナソニックが海外向けのテレビに採用した影響が大きかったと思います

麻倉氏:このようにHDRはAVテクノロジーにおける現在のトレンドとなっている訳ですが、先程提示したスイートという枠組みで見ると、今年のAV業界におけるトレンドは「Ultra HD Blu-ray Discがいよいよ離陸する」という話題でしょう。もう1つ、注目すべきはOTT(Over The Top:ネット上でコンテンツやサービスを提供する非回線事業者)が強くなってきたこと。「NETFLIX」や「Hulu」などのアメリカの業者が4K配信を始めています。

 これまで家庭における映像コンテンツはディスクの世界がメインで、後から付随して配信が来ていました。ですが今や両者は対等で、円盤とOTTは同じレベルの立場になりました。テクノロジー的にも、ディスク向けに開発された「HDR10」というものが、そのまま同じ形で配信に用いられます。例えばドルビービジョンは、米国のVIZIOや中国のTCLがUHD BDに先んじて“OTT関連テレビ”として採用しており、OTT業者ではVUDUとNETFLIXが既に同技術を用いたサービスを提供する構えです。テレビがOTTのHDRに対応し、同じテレビでUHD BDのHDRにも対応する、こういった流れができて、その結果4KとHDRが広範なAVフィールドにおける非常に重要なキーワードになってきました。昨年は「こういうことが言われ始めた」というレベルだったのですが、今年はそれがサービス開始やディスクのリリースというカタチになって出てきています。

 この流れに関する非常に大きなトピックとしてUHD Allianceがレギュレーション「Ultra HD Premium」を発表したことを挙げたいと思います。これは何の規格かという話ですが、まず団体の旗揚げはサムスンとFOXの提携に由来しています。それに関して各社がどう集まるかというのが見ものでした。というのも、今までこの手の業界団体は日系メーカーが中心でした。対して今回はサムスンが中心なので「どんなものか」という関心が寄せられていたのです。

――DVD、HDMI、DLNA、Blu-ray Disc……、確かに今までの業界団体は、立ち上げの中心に必ず日本企業が居ました。今まではそれが“当たり前”だったので、今回は少なからぬ不安を感じてしまいます

麻倉氏:ですがフタを開けてみると、現在は幹事会社が12社、コントリビューターが23社の合計35社という一大勢力になりました。幹事は(ソニー、パナソニック、サムスン、LGの)CE、(FOX、ワーナー、ユニバーサル、ディズニーの)スタジオ、(ドルビー、テクニカラーの)テクノロジー会社、(NETFLIX、Amazonの)流通が手を組んで構成しています。

 そのUHD Allianceが4日発表会を開催し、ディズニー、ユニバーサル、ワーナー、FOXの各幹部が一堂に会しました。アライアンスは基本的にOTTとUHD BDのHDRがいかに素晴らしいかを宣伝するというものですが、実はこの会はかなり画期的で、2006年に勃発したBDとHD DVDとの規格戦争時は、ソニー・ピクチャーズとディズニーが推すBD派と、ワーナーとユニバーサルがサポートするHD DVD派でスタジオが完全に割れていました。結果は御存知の通り2008年にワーナーが寝返り、HD DVDが総崩れするという形で終結した訳ですが、それに対して今回は各スタジオが最初から手を組んでいるのです。

新レギュレーション「Ultra HD Premium」の発表会に勢揃いしたハリウッドメジャーのトップ

――それを思うと、ハリウッドのメジャースタジオがズラリと顔を合わせる今回は確かに画期的です。ユーザーも安心してUHD BDのレギュレーション、「Ultra HD Premium」に手を出すことができますね

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