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歴代ミクロマンを大公開! 玩具マニア指田稔さんがコレクターの世界を語るコレクターのお宅拝見(前編)(2/3 ページ)

» 2016年02月02日 06時00分 公開
[村上万純ITmedia]

工学的+文化的視点でミクロマンの価値を発見

―― なぜ、そこまでミクロマンにハマったんですかね。

指田さん やはりデザインがかっこよく、独自性があるというのが一番。子供向け玩具とは思えないくらいデザインが素晴らしいんですよ。

精緻なデザイン 精緻なデザインが特徴のミクロマン。写真は磁石を内蔵した「タイタンシリーズ」
付け替え可能なパーツ 「レゴブロックのようにパーツを付け替えできるのも楽しいです」と指田さんは話す
翼を装着 鳥型フィギュアの翼をミクロマンの腕に付けられるなど自由度が高い

―― 指田さんは、本業ではデザイナーとして業務用ゲームや家庭用ゲーム、キッズ向けの製品などを多数担当されてきたそうですが、それはいわゆる子供が玩具を見て言うような単純な「かっこよさ」とは違う、デザイナーとしての意見でしょうか。

指田さん 玩具をデザイン的な視点で見るきっかけとなったのは間違いないです。高級感のある金属やゴムなどをハイブリッドに使用し、子供向けなのに可動パーツや顔の造形などは精巧でアニメ然としていない。リアルな造形は他の日本の玩具とは一線を画していて、何もかもがユニークで素晴らしい。可動する関節は、傘の骨のリベットからヒントを得ていると聞きました。

ダッシュウイング 指田さんのお気に入りは、ダッシュウイング付きミクロマン

―― 工学的な視点以外での魅力はありますか。

指田さん 当時のミクロマンの開発担当者とお話する機会があったんですけど、そのデザイン思想にも感銘を受けました。オリジナリティーのある世界を表現する一方で、ラッパズボンのような大人のファッション、オカルトブーム時のモアイやツタンカーメンなど、とにかく流行をどんどん取り込む。アレンジも絶妙で子供にこびてないというか、子供が持つ年長者への憧れニーズをうまく満たしてくれるような表現しているんですね。今、自分が仕事で子供向けゲームを担当しているので、作り手としてそういったコンセプト部分が気になっている節もあるかなと。

ラッパズボン ラッパズボン風のミクロマン
ツタンカーメン ミクロマン「コマンドシリーズ」は、なぜかツタンカーメンにミクロマンをしまう仕様(左下)
コマンドシリーズ コマンドシリーズには、スカートをはいた女性のミクロマンも。「ミクロウーマン」とは呼ばないらしい

―― 大人のファッションを取り入れた男児向け玩具というのは面白いですね。

指田さん そういえば、ファッション系のデザイナーが玩具やフィギュアに注目し、おしゃれ玩具雑誌にミクロマンが掲載された時代もあったんですよ。

―― えっ、それはどういう流れで。

指田さん 90年代にスポーン(1992年に米国で出版された漫画)ブームが到来して、玩具・フィギュアが子供だけのものではなく、最先端の大人向けのアイテムとしてもてはやされ、その流れでミクロマンも再評価されてコレクターが劇的に増えたんです。

―― コレクターにもブームがあるんですね。

指田さん 私みたいにブームに関係なく集めてる人もいますが(笑)。全体的にユニークな玩具が再評価された時代で、ミクロマンにも注目が集まっていましたね。

―― ブームになる前から注目してたんだぞと(笑)。指田さんは単にモノとしてミクロマンを見ているわけじゃないんですね。

指田さん そんな大層なものではありませんが、その商品がその時代に受け入れられて、ブームになった文化的な背景はすごく気にします。骨董(こっとう)と同じで、モノの出自や歴史的背景を自分で見つけて他の人にも分かりやすく説明したい。みんなが見ているモノを少し違う視点から眺めてみる。そこで新しい面白みや価値を人より早く発見したり、既存の意味を再構築したりしたい。それはある種の発明ですし、それができるクリエイティブなコレクターは尊敬します。

―― 他の人から見るとガラクタにしか見えないものに価値を見いだして、その見方を教えてあげるということですね。私もミクロマンがそこまで深いものだと今日まで知りませんでした。

指田さん 初代ミクロマン関連の商品は、パッケージに外国の子供を起用することもあったんですけど、どんな狙いがあってそんな斬新な試みをしたのか気になるじゃないですか。そういう、当時の開発者の思惑なんかも読み取りたい。

 あと、ミクロマンって最低限の設定しかないので、自由に想像できる余白があるんですよね。

パッケージ どこか子供向けらしからぬ雰囲気をまとうパッケージ

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