見た目やスペックはちょいと地味だが、パナソニックの新しいハイエンドコンデジ、「LUMIX TX1(DMC-TX1)」に注目したいのである。
ここ2年ほどでハイエンドコンデジといえば「1型センサー搭載機」に変わってしまい、かつてハイエンドコンデジの代名詞だった「1/1.7型センサー機」はあまり見なくなった。ワンランク上にクオリティが上がったわけで(その分価格も上がったけど)、よいことではある。
でもそのほとんどが3〜5倍ズームと、ズーム倍率を抑え、その分F1.8〜2.8クラスの明るいレンズを搭載した画質重視モデルとなっている。一方望遠に強い高倍率モデルは、のきなみボディがでかい。
センサーサイズが大きいのだからそれもしょうがない感もあるが、コンパクトだけど望遠もそこそこ撮れるカメラも欲しいよねと思っていたのだ。
明るいレンズを搭載した画質重視のモデルの方が、ハイエンド機を求めるカメラ好きにはウケるけど、常用コンデジとして気軽に使うには10倍ズームくらいは欲しい――。TX1はそこをピンポイントで突いてきた唯一のハイエンド機なのだ。35mm判換算で25〜250mm相当の10倍ズームハイエンドコンパクトなのである。望遠がここまで伸びると、普段はこれ1台でなんとかなるよね的な利便性があるのだ。
その上、小さいけれどもEVFは付いているし、モニターはタッチパネルだし、EVFをのぞきながらタッチパネルでAFポイントを動かせる「タッチパッドAF」は用意されているし、パナソニックならではの4Kフォトやフォーカスセレクトといった面白い機能も全部ある。
なかなか面白いヤツなのだ。
TX1はシンプルなデザインのボディを持つコンパクト機。重さも310gとそこそこ抑えられている。
センサーは1型で2010万画素。ハイエンドコンデジとして主流のセンサーだ。沈胴式のレンズは25〜250mm相当。明るさはF2.8-5.9。広角端ではF2.8だがちょっとでも望遠に持って行くとすぐ暗くなり中望遠以降はだいたいF5.6くらいになるので、ハイエンド機としては明るくはない。でもそれ以上にこの10倍ズームが便利だ。
LEICA銘を打つだけあり、レンズのクオリティはなかなか高くけっこうビシッと決まる。高倍率ズーム機だけに最高の画質とはいいづらいが、あまり無理をいってもしょうがあるまい。
曇天下だったがざっとこんな感じで楽しめる。
コンデジで10倍ズームなんて珍しくはないが、1型センサーでこの小さなボディでこのズーム倍率はTX1が初なのだ。1/2.3型センサー搭載の普及型コンデジでは30倍ズーム機が当たり前だが、利用頻度を考えると10倍ズームくらいでちょうどよい。
手ブレ補正は望遠でも効きがよい。
ISO感度は125から12800。拡張ISO感度で下はISO80まで落とせ、上はISO25600まで上げられる。最新の画像処理エンジンで、高感度時のノイズ処理もうまくISO1600くらいなら十分使えそうだ。
撮影最短距離は広角端でレンズ前5cmとまあまあ。AFは快適。パナソニックならではの空間認識AFはコントラスト検出AFとしては最速の部類といっていいんじゃないかと思う。暗いと少しかかるが明るい場所ではすっと合う。
さらにうれしいのがタッチパネル対応だ。背面のモニタは3型で明るくて見やすく、タッチパネルにも対応している。多くのシーンでタッチパネルを使えるが便利なのは、タッチFnキーとタッチAFである。
普段はマルチAFにしておき、うまく目的の被写体をつかまえてくれないときは、撮りたい被写体を指で触るだけでいい。タッチしてダイヤルを回せばAF枠のサイズもその場で変えられるし、ピンポイントAFにすればもっと狭いエリアでのAFも可能だ。
EVFをのぞいているときはタッチパッドAFを使える。EVFを利用中に、背面モニターをタッチパッドとして使う機能で、ファインダーをのぞいた状態で右手親指で画面を触れば、タッチAFとして使えるのだ。「相対位置」を指定すると、パソコンのタッチパッドのようにAF枠を動かせる。これはすごくよい。
この快適さは他のカメラにはない。しかもタッチAF時に、AFのみならず「AF+AE」の機能もついた。iPhoneのようにタッチした位置にAFとAEの両方を合わせてくれる機能。タッチした被写体に露出も合わせてくれるのだ。
通常の評価測光だと背景の暗さにやや引っ張られて菜の花が飛びぎみだが、タッチAF+AEで撮った方は菜の花に露出をすぱっと合わせてくれた。
ただ、逆に不用意に露出が変わってしまって使いづらいという人はオフにした方がいい。あと、縦位置で鼻が触れてしまうと思わぬところにタッチAFが動いてしまう点には気を付けたい。
そして、このサイズでEVFを搭載したのはすばらしい。
残念なのはEVFのクオリティ。小さくて見やすいとはいえない。スペースの問題もあるだろうが、このクラスのカメラならもうひとがんばりしてほしかったところだ。
ただ付いているのと着いていないのではえらい違いであり、他のハイエンド機やミラーレス機と比べると見劣りするというくらいであり、実用性は十分にある。
連写はAF追従で秒間約6コマ。高速連写にすると秒間約10コマの撮影が可能となる。
シャッターはメカシャッターで1/2000秒まで。電子シャッターで1/16000秒までいける。オートにしておくと自動的に電子シャッターに切り替わる。
タッチパネルも含めて操作性は非常によい。
ダイヤルはレンズ周りのリングと上面右上の電子ダイヤルの2つ。カスタマイズが可能なので、わたしは電子ダイヤルを露出補正に割り当てている。この位置に露出補正があると便利なので。
撮影の基本はフルオートのiAポジションであるが、これをiA+にセットすると露出補正など細かな調整もできる。これはよい。
P/A/S/Mの各モードにすると、ハイライトシャドウ、ダイナミックレンジコントロール、超解像などさまざまな絵作りが可能だ。
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