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» 2016年06月07日 14時06分 公開

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:世界の4K番組最前線! 「miptv2016」レポート(前編) (2/5)

[天野透,ITmedia]

麻倉氏:それがなかなか興味深い話題があるんですよ。後ほど詳しくお話しましょう。とまあ、このように4K制作は世界的に活況を見せているのですが、それと同時に4Kの伝送系も頑張っています。コンテンツ、伝送が大きく拡がっており、特に「ここ6カ月で大きく伸びている」ということが異口同音に聞かれました。例えば先ほど挙げたINSIGHTやFashon Oneは共に昨年秋に放送を開始しています。特に商用化という点に注目すると、以前は主に番組制作の話題が多かったのですが、昨年後半からは伝送の話が増えました。

 ポイントを挙げると、放送におけるHDR技術としてHybrid log-Ganma(ハイブリッド・ログガンマ、HLG)が国際規格となった点が大きいでしょう。これによって規格拡充、コンテンツ制作、インフラ整備、そして端末の普及というサイクルが完成し、4Kは発展期へ入りつつあります。しかもドルビーが提唱したPQ(Perceptual Quantizer)カーブを使用するHDR規格との相互運用も決められ、放送、OTT、Ultra HD Blu-rayが“HDRの輪”で結ばれるのです。そのタイミングがまさにmiptvが開催された4月だったといえますね。

――制作と伝送、そして消費者の環境が整い、「後は4Kテレビを売るだけ」という発展フェーズに突入した、と。日本では録画に関するトンデモ案が問題になっていますが、世界的に見ると実に楽しみですね

フランス、オランダ、トルコ、果てはアフリカまで、欧米を中心とした海外の放送業界ではまさに4Kラッシュが起きている

麻倉氏:展望が明るい4K界隈ですが、Eutelsatが行った業界調査が今後の方向を占う上で興味深い資料となりそうです。これは今年1〜2月に実際された調査で、3万7000社のリストのうち44カ国370の回答が得られたというものです。回答業者の内訳として、放送形態は有料または無料の電波(地上波または衛星波)による放送が大部分を占めています。正確にいうと、有料放送のプラットフォーム業者(例:スカパー!)が27%、無料放送業者(例:地上波民放)が20%、有料放送のチャンネル業者(例:WOWOW)が15%、OTT業者(例:NETFLIX)が11%です。

 まず4K放送の開始時期に関する質問です。全体のうち16%は既に4K放送を開始済みで、15%は2016年中に、45%が2〜5年以内に4K放送を始めると回答しています。合算すると今年の末までに31%の業者が、数年内には76%もの業者が4K放送サービスを提供するとしていることになります。4Kに無関心なのは24%で、この数字からも4Kは世界的に大きな関心が向けられているということが分かりますね。

 次は提供インフラ形態の希望に関する質問で、通信系が39%、衛星放送による直接受信が14%(いずれも単独放送)、この2つへ同時に提供する(スカパー!でもひかりTVでも同じ番組が見られるといった、日本における一般的な形態)としたのが25%、OTTが12%、CATVが11%という結果になりました。特に通信の頑張りは興味深いところです。

――昨今はHuluやNETFLIXなどのOTTが注目を集めていますが、世界的には通信業者と衛星放送が自社インフラで頑張るのが主流なんですね。これはなかなか面白い結果です

フランスeutelsatが行ったリサーチより。既に放送を開始しているものも含めて、全世界370の有効回答のうち実に76%が数年内に4K放送にチャレンジしたいと回答。4Kへの注目度の高さが伺える
こちらは4K放送のインフラに関するアンケート。内容は日本のひかりTVのようなIPTVが一番人気で、次いで複数経路による選択肢を持ちたいとするもの、衛星放送が好ましいとするものが並ぶ。高画質映像は放送系が人気のようだ。近年注目されているOTTはCATVとさほど変わらない数値だった

麻倉氏:ビジネスモデルとしての志向に関するアンケートを見てみると、現在のところストリーム型VODとPPVを好ましいと考えているのは50%、一般的な有料放送チャンネルでは支持率が49%、放送網を使ってクライアントに一定数のコンテンツを定期的にダウンロードするプッシュ型VODは38%が好ましいとしています。

 この結果によると現時点ではVODとオンエアはほぼ拮抗した勢力といえますが、「では今から3年後にサービスを提供するならばどうか?」と質問を変えてみると、ストリーム型VODが56%、プッシュ型VODが46%、一般有料放送が44%という数字となりました。一般的な放送系のメディアも根強く残るものの、視聴者がタイムスケジュールの制約を受けないVODタイプがメインになると予想されます。

――利便性の観点から考えると有料サービスはVODへ雪崩れ込むかと思いましたが、意外と従来の放送スタイルというのも残るものなのですね。それからプッシュ型のVODは一般家庭ではあまり見られないですが、ホテルなどの管内サーバーから一括配信ができるB2Bシーンでは思いのほか需要があるみたいですね。これも興味深い結果です

ビジネスモデルに関するアンケートは、現時点(写真=上)と3年後(写真=下)で実施。いずれもVODやPPVといった、コンテンツごとに課金を求める方式が人気だ。一般的な有料チャンネルスタイルも人気だが、3年後では人気度が落ちているというのが興味深い。また、ホテルなどで用いられるローカルサーバ型のプッシュVODも将来的には発展が見込まれる

麻倉氏:コンテンツ的には圧倒的にライブ・スポーツが支持されており、実に84%が4K番組の内容として「好ましい」としています。同じくらい支持されているのは映画で、支持率は82%です。以下、ドキュメンタリー・旅番組が63%、ドラマが47%、音楽ライブなどのイベントが32%と続いています。

――やはりスポーツと映画は圧倒的に人気ですね。個人的には文化系のライブイベントがもっと高支持率を獲得するものと思っていましたが、結果はいまひとつふるわないですね。音楽産業の低迷と関連したりするのでしょうか

4Kに相応しい(制作したい、放送したい)コンテンツに関するアンケート。スポーツ、映画、自然科学・ドキュメンタリーが“3強”を形成している。これらと比較すると、祭りやパレードといった文化イベントの支持率は若干低い

麻倉氏:Eutelsatの調査はこのあたりにしておいて、ここからは今回のセミナーのお話を詳しくしていきましょう。

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