今年は各メーカーが発表するコードレススティック掃除機が軒並み“当たり”で、発表会などに参加するたびに各メーカーの底力を思い知らされている。その中で最も興味をひかれたのが、本体を半回転させることでノズルを“I字型”に切り替え、家具と壁のすき間を掃除できるパナソニックの“iT”(イット)だった。
パナソニックは、スティック掃除機の分野では国内メーカーの中でも最後発であり、前モデル「MC-BU110J」はデザインはエレガントながらノズルがやや大きく、取り回しが悪かったため個人的にはあまり評価していなかった。しかし、それからおよそ1年半、デザインと使い勝手の両面で驚くほどブラッシュアップされた“iT”「MC-BU500J」が誕生した。今回は、同社商品企画部の北口和美氏と、デザイン担当の山本侑樹氏に開発の経緯やデザインのポイントなどについて聞いた。
コードレススティック掃除機“iT”の名前の由来は、本体に対してノズルを“I字型”にも“T字型”にも片手で切り替えられること。まるで一筆書きのように部屋中を掃除できることを実現した「くるっとパワーノズル」が最大のポイントだと北口氏は話す。
これを実現するため、技術開発のベースに利用したのが、三洋電機のキャニスター式掃除機“airsis”(エアシス)に採用されていた「逆立ちパワーノズル」だった。
「コードレススティック掃除機は、手に取ってサッと使えることが絶対であり、命です。でも、付属のアタッチメントなどを使うと、それだけで動作を止めることになります。これをなんとかしたかった」(北口氏)
パナソニックにはキャニスター式掃除機に使われる「親子ノズル」があったが、足でポンっと取り外すことができても、やはり動きを止めてしまうことは変わらない。そこで三洋電機が持っていた技術をブラッシュアップする方向で開発することに決めたという。「“隅やすき間を逆立ちで一発!”というのが、元々のキャッチフレーズだったということも決め手になったかもしれません。ただ、それをよりスマートにするために、今回、設計やデザインがかなり頑張ってくれました」(北口氏)
デザイナーの山本氏によると、コードレススティック掃除機“iT”をデザインする最初の段階から、ノズルの付け替えはなしで、床もすき間も掃除できるものにするというのは決定事項だったという。
「ただ、三洋電機の『逆立ちパワーノズル』を使った掃除機は、ハンドルが左右両方に付いていました。見た目には分かりやすく、確かに両手を使えば回転はさせやすかったのですが、持っている手を持ち替えることで、どうしても流れが止まってしまいます。つまり、このままでは“一筆書き”のコンセプトを実現できません」(山本氏)
まるで一筆書きのように掃除をもっと気軽にできるようにしたい。しかも部屋に“出しっ放し”にしたくなるよう、スリムでシンプルにデザインすることが不可欠だったと山本氏は話す。「ハンドルのボリュームを抑えつつ、使いやすくするために、ハンドルを“L”字型にデザインしました。ハンドルのデザインが1つの大きなポイントで、片手でノズルを切り替えるために、モーターやバッテリーの配置も考慮し、スムーズに回せることも考慮しています」(山本氏)
ノズルを片手で“T字型”から“I字型”へと変えることができて、かつ“I字型”ですき間を掃除するときも、無理なく、使いやすさは維持しなければならない。そのために重要なのがハンドルの角度だったという。
「ハンドルは垂直ではなく、あえて30度の角度をつけました。これにより回転させ、“I字型”にした後でも手首に大きな負担なく、掃除をし続けることができます。もちろんこれがパーフェクトとはいえませんが、すき間を掃除する時間や面積は、通常の床面と比べて少ないですから、現段階ではこれが最良だと自負しています」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR