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映像技術の底力を見せつけたパナソニックとソニー、麻倉怜士のIFAリポート2016(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2016年10月03日 20時24分 公開
[天野透ITmedia]

麻倉氏:それはOLEDの普及がポイントです。基本的にはLGディスプレイのパネルを使ったメーカーの話になりますが、これまでの革新的な少数メーカーから、多くのメーカー・ブランドがOLED対応を完了し、最早OLEDは特別なデバイスではないという勢いが今年のIFAでは見られました。

 とくに今回のOLEDにおける最重要ポイントはパナソニックでしょう。昨年に引き続き事業部長にインタビューする機会があったのですが、今年はかなり自信をつけてきた感じがしました。ヨーロッパにおいて評価が高まりつつあるというところがとても大きいのでしょう。

――先にも挙げた通りパナソニックは昨年の段階でOLEDを欧州市場へ投入しましたが、これの評価が良かったということでしょうか?

麻倉氏:そう単純ではなく、昨年欧米限定でOLEDを投入したのはあまりに下がった雑誌の評価を上げる隠し玉という意味合いがあったわけです。ご存知の通りパナソニックはプラズマテレビで極めて高い評価を得ていましたが、その後で液晶だとIPSのコントラスト問題からどうしてもクオリティー的に劣ってしまったわけです。対策としてパネルはIPSを採用しましたが、その後サムスンが「液晶テレビはVAが最高」というVAキャンペーンを展開した結果、コントラストが出ないというIPSの問題を各所から指摘されるようになってしまいました。

パナソニックのプレスカンファレンスではアプライアンスカンパニーで副社長を務める楠見雄規氏が登壇し、映像事業をはじめとする各種取り組みを熱弁した
プラズマ、液晶、そしてOLEDと、過去の評価が並べられている。プラズマテレビに対するパナソニックの誇りが感じられる一幕

――IPSの画質的な排斥が端的に表れたのがUltra HD Premium認証ですね。あれはコントラスト基準がIPSでは物性的に極めて厳しく、実質VAモデル専用のような規格になっています

麻倉氏:ヨーロッパは雑誌の評価が売上に直結する文化があり、メディアのブランドイメージは極めて重要です。そのため「プラズマをやってきたパナソニックは自発光デバイスを重視している」というメッセージを大々的に打ち出すため、台数はとりあえずとして、自発光のモノを出す必要があったという訳です。それから1年経ち、OLEDと従来のIPSだけでなく、市場の評価が高いVA液晶もきっちり出すという地道なマーケティングを続けたことで、パナソニックブランドに対するプレスのイメージアップ効果がかなり出てきました。

――なるほど、いうなれば、かつての評価を取り戻して名誉挽回を達成したということですね

ヨーロッパにおけるパナソニックブランドの威信をかけて、昨年のウィンターシーズンに投入された第1世代OLEDテレビ「CZ950」。これによりパナソニックのテレビは見事に名誉挽回を果たす
そして今年出展されたパナソニックのOLED TVコンセプト。具体的な製品はもう少し待つ必要があるようだ

麻倉氏:第1世代OLEDパネルを搭載した昨年のモデルは初期目的を見事に達成したといえるでしょう。これからは第2世代パネルです。第1世代との違いは暗部階調で、第1世代の場合、ある値までの暗部階調は全部黒に引き込んでしまっていました。加えて全体的な平均輝度が低い場合は黒ノイズも出ており、さらにインピーダンスの問題で画面の左右両端に黒帯が出るという深刻な問題もありました。いずれも原因はパネルで、黒帯はインピーダンス、階調は制御の問題でしたが、第2世代はこれらが少しずつ改良されており、黒帯が無くなり、暗部階調やノイズに少しずつ良くなりました。

 昨年からの進化が実感できる展示として、目立たないところに比較デモがありました。1つはIPSとVAの液晶比較で、こちらもコントラストがなかなか違ったのですが、本命はやはりOLED、この冬に出る製品の暗部色がもう笑ってしまうくらい違いましたね。デモ映像の忍者屋敷のような場面で、第1世代モデルは暗部がほとんど真っ黒なのが、第2世代ではライトを当てたかと思わせるくらいに色が出てきています。それはもう誰が見ても違うと分かるレベルですよ。

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