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“オーディオの名門”からハイエンドヘッドフォンが続々――専業メーカーとは一味違う音へのアプローチ秋のヘッドフォン祭2016(2/3 ページ)

» 2016年10月24日 19時34分 公開
[天野透ITmedia]
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日本の老舗から“もう1つの顔”

 ヘッドフォン祭のポスターは毎回両面刷りで作られているのをご存知だろうか。今年も先ほどのUtopiaとは別にもう1面のデザインが作られたのだが、その紙面を飾ったのはデノンの新フラッグシップ機「AH-D7200」だ。価格はオープンで、市場での想定売価は10万円前後を見込んでいる。2006年に発売され、ツヤ出し塗装のマホガニーハウジングなどで話題を呼んだ「AH-D7000」の発展型である同機だが、開発に際してAH-D7000のプレッシャーはかなり大きく、先代・先々代を超えるために大きな部分ではフリーエッジドライバーから、小さな部分ではネジ一本に至るまで、あらゆるパーツを新設計した。

実はこちらの方がポスターの表面だったりする“もう1つの顔”。主役の「AH-D7200」が実際に発売されるのは2017年1月で、現在は「完成度8割」だそうだ。それにしてもイラスト集「ヘッドフォン少女」やFitEarの坂本萌音さんが出てきて以来、ヘッドフォンを付けた女の子のイラストが増えてきた(画像はヘッドフォン祭公式サイトより)

 特徴的な変更点がハウジングに使用される木材だ。AH-D7000ではギターに多く用いられるマホガニー材だったのに対して、AH-D7200では高級車の内装パネルや高級家具などで使用されるアメリカンウォルナット(胡桃)を用いている。この2つを比較するとマホガニーよりもアメリカンウォルナットの方が比重が高いため、木材に由来する不要な振動が抑えられる。対してギターに用いる場合はこの“鳴き”が楽器の響きにおける個性となるため、ヘッドフォンとは違って歓迎されるのである。

アメリカンマホガニーのハウジングが特徴的な「AH-D7200」。ブースで音に対する話を聞いたところ「特定のジャンルを狙うのはニッチであり、デノンは普遍的な音を目指す」という興味深い返答が返ってきた

 このような変更点は確実に音に表れている。デノンでは「AH-D7000はどっしりとした音を目指していましたが、今回はレンジを広げました」としているが、その原因はヘッドフォンを取り巻く環境が変化したことにある。AH-D7000が登場した2006年頃は、一般的には「iPod nano」の登場に沸いていたという時期。対して現在は商品数、価格ともにグンと上がっており、要求される水準も違う。デノンの新フラッグシップであると同時に、同社ヘッドフォンの50周年記念モデルでもある本機は、ハイレゾ全盛期の今だからこその設計が詰め込まれたモデルである。

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