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なぜ玄米が美味しく炊けるのか? 三菱「本炭釜 KAMADO」の加熱技術に迫る滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/2 ページ)

» 2016年11月22日 06時00分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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玄米のイメージ(Copyright paylessimages,Inc.All Right Reserved.)

 健康志向の高まりやダイエットのためなど、若い女性を中心に玄米を食べる人が増えてすでに数年が経っている。だが、一般的にはまだ「玄米=美味しくない」というイメージもあるようだ。実際、一般的な炊飯器で炊いた玄米を食べてみると、白米に比べてやや固く、食感が良いとはいえない。

白米と比べると炊き上がりの色もやや茶色っぽい。普通の炊飯モードで炊くと、食べられるものの、白米と比べるとやはり美味しくない

 玄米とは稲の果実である籾から籾殻を除去した状態で、また精白されていない状態の米を指す。玄米そのものが“ほぼ完全食”といわれるように、白米では考えられないほどのビタミンB1を含んでいるほか、カラダに必要な栄養素の多くを玄米だけで補ってくれるほど栄養価が高い。

 だが、食感が固くてぼそぼそとしているため、かむ回数が自ずと増える。1回に食べるお米の量は減らせるかもしれないが、やはり美味しいとはいいがたい。白米がスタンダードとなってしまったこの時代、なかなか玄米食を摂り続けるのは難しいというのが実情だろう。

 なぜ、玄米を炊飯器で炊こうとすると美味しく炊けないのだろうか? これは玄米は表面の薄皮である糠(ぬか)がついているため、なかなか水を吸い込まないからである。気温や湿度などの影響にも左右されるが、まる1日、水に浸けておいてもなかなか内側に浸透しないという。

表面の薄皮である糠(ぬか)がついている精米前のお米の状態を指す

 このため、玄米をわざと金ザルなどで研ぎ、無理矢理傷をつけて浸水しやすくする方法もある。だが、これは当然自然な傷ではなく、せっかくの栄養価の高い玄米の栄養素が詰まっている部分を分離してしまったり、割ってしまったりする。またお米自体の形を崩すことになるので、最適な方法であるとはいえない。

「玄米芳潤炊き」の秘密

 そんな状況に目をつけた三菱電機は最新のジャー炊飯器「本炭釜 KAMADO」は、「玄米芳潤炊き」というモードを搭載している。これは蒸気レス炊飯器時代から受け継いでいるモードであり、その名の通り、玄米を白米同様、瑞々しく美味しい状態で食べるために生み出されたモードだ。実は一般社団法人 高機能玄米協会と共同開発したお墨付きの機能で、このモードを使うことで玄米は驚くほど美味しく食べられるという。

 では、「玄米芳潤炊き」とはどのようなモードなのだろうか? ここでは三菱電機ホーム機器の「本炭釜 KAMADO」開発者である金井孝博氏に詳しく聞いた。

三菱電機ホーム機器 家電製品技術部調理機器技術課の金井孝博氏

 「まず通常の白米を炊飯する場合と大きく違う点が、予熱時の温度上昇にあります。『玄米芳潤炊き』の場合、釜内の温度を急激に90℃近くまで上昇させます」。予熱時に釜内の温度をここまで高めることで、玄米の外皮が適度にやわらなくなり、お米が吸水しやすくなるという。

表A部分の約30分が予熱時間。5分過ぎから一気に加熱することで温度が90℃まで上昇する。その後、加熱を止め、ヒビの入った玄米にじっくりと吸水。これにより粒感がありながらみずみずしい玄米ごはんに仕上がる

 「熱を一気に加えることで、すべての玄米の外皮にまんべんなくヒビが入り、わざわざ傷をつけたり削り取ったりしなくても、玄米が自然と吸水できるような状態になります。これにより、白米同様、中までしっかりとα化した、柔らかくみずみずしい炊き上がりへ一歩近づきます」

 とはいえ、一気に温度を高めるだけでは完璧でない。その後、少しだけ加熱を止めて冷ますことが重要だという。

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