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「コスプレするのにいくらかかるの?」 レイヤーの懐事情を聞いてみた(2/2 ページ)

» 2016年12月24日 06時00分 公開
[ちぷたそITmedia]
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衣装作りに1カ月半かかることも

N子さん 例えば、学園ものだったらブレザーを買ってきて加工すればいいから、1〜2日でできます。でも、『刀剣乱舞』のような凝った衣装は、1週間〜1カ月半かかります。防具を作るだけで1週間かかることもありますし。1つ1つ江戸ひもで編むから、すごく時間がかかるんですね。さらに塗装もしなきゃいけない。

ちぷたそ レイヤーさん、ただでさえ時間なさそうなのに……!

N子さん 以前、刀剣乱舞の山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)というキャラクターの衣装を作ったのですが、彼はマントの裾が汚れてるんですね。汚れ感を再現するのに最初は灰色の絵の具を塗っていて、それなりのできにはなったのですが、自分的に納得できなくて。

くにひろ 山姥切国広(画像は『刀剣乱舞-花丸-』公式サイトより引用)

N子さん もっと汚れた感を出したいなぁと思っていたときに、レイヤー仲間に「ライターであぶるといい」というテクニックを聞きました。それで仕事の後、夜中3時くらいに帰ってきて、ライターでマントの裾をあぶりながら、「闇の儀式かな?」って(※N子さんは洗面台に水をはった状態でいつでも鎮火できる状態で行っていますが、テクニックが必要だそうなので一般の方はマネしないでください)。

ちぷたそ お母さんがそれ発見したらびっくりするよなあ。深夜に帰ってきた娘が部屋で火遊びしてる……って。

マント N子さんによる解説「刀剣乱舞のキャラ『山姥切国広』のマントの裾。できるだけ、汚く! を目標に、設定資料を見ながら、切り刻んだり、絵の具で汚したりしました。写しの俺にはこれがお似合いなのさ。仕上げは深夜3時に裾部分をライターであぶりました。悪魔の儀式かよ。親に見られたら社会的に死ぬのが実家暮らしレイヤーのしんどさ」

 あと、単純に好きだったり、コスプレする頻度が高かったりするキャラは衣装を2着ぐらい作ってアップデートしていきます。公式設定資料集が出ると、それに合わせて作り替えることもありますね。

 ある日、血のりを使った撮影に誘われたもんだから、夜中に衣装をビリビリに切り刻んでいるところを母親に見られたことなんかもあります。闇の儀式だと思われていたら嫌ですね……。

ちぷたそ 闇の儀式(笑)。出来上がった写真を見せてもらうと華やかだから、そうした苦労は隠れちゃいますね。

N子さん そうそう、そうした成果物や楽しさが苦労を覆っちゃうから、続けられてます。

作品を好きになったら、コスプレするか検討に入る

ちぷたそ 「アニメを見るときの視点が違いそう」って意見があったのですが、アニメを見ながら、「衣装が作りやすそうかどうか」ぐらいは考えていそう。

N子さん アニメを見て、「面白い、好き」ってなると、まずはコスプレするかどうか検討に入るんだけど、まず2回見て、画面のスクリーンショットを撮ったり、公式サイトを見たりして、キャラクターの前、横、後ろを把握できる画像を一生懸命用意します。そして、次の日に布を買いにいく。

ちぷたそ 行動早い! そしてN子さんの場合ははじめに「作品に愛着が持てるか否か」があって、その後にコスプレしたい欲がくるんですね。

N子さん ……という人もいれば、「私がすぐやるのは軽率かも」って3話くらい見て、こういうのがやりたいってイメージを固めてから衣装製作に入る人もいます。今放映中の『ユーリ!!! on ICE』の放送開始後はすごかった! 1話放送後、週末にはみんな撮影していましたね。

ユーリ 「1話放送後、週末にはみんなコスプレしていた」という『ユーリ!!! on ICE』(画像は公式サイトから引用)

ちぷたそ レイヤーさんのフットワークが軽くてびっくりする!

N子さん 作品の人気、話題度はもちろんだけど、比較的衣装が作りやすいからではないでしょうか……。ユーリ!!! on ICEは、ジャージはないにしても黒いパーカと金髪でヤンキー座りしたらそれっぽくなるキャラクターもいるので、コスプレをするにあたってハードルが低い。それですっごく早かったのかもしれない。

ちぷたそ レイヤーさんが動くのはいい作品な気がするなー。はやる。


 ちなみに、インタビュー当時にN子さんはネットオークションでアイススケート靴を注文していたのですが、後日彼女が上げていた写真では、スケート靴は塗装してひと手間が加えられた状態になっていました。こだわりがすごい!

靴 N子さんによる解説「ネットオークションで落札したスケート靴はもともと白かったけど、黒く塗装しました。皮製品用の塗料をホームセンターに買いにいったのでちょっと高くつきましたが、これも再現度を高めるためです。最初から黒いの買えよって話ですけど……」

 3回に渡ってお届けしたコスプレイヤーさんインタビューも、これでおしまいです。インタビューを通じてレイヤーさんたちの、作品やキャラクターに対するリスペクトを強く感じました。自分自身を使って世界観を表現する努力は大変そうですが、何かに一生懸命打ち込む姿は美しかったです。

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