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きっかけは奥さんの一言、クローゼット型のホームクリーニング機「LG styler」誕生秘話滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2017年01月30日 15時23分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 “蒸気の力”で衣服のシワやニオイをとり、花粉やダニなどのアレルゲンも除去できる――世界初のクローゼット型ホームクリーニング機「LG styler」が日本に上陸した。「二子玉川 蔦屋家電」が取り扱い、当面はホテルやレストランなどをターゲットとしたB to B製品として販売されるものの、一般ユーザーも22万8000円(税別)で購入が可能だ。ここでは気になる中身や技術について、LGエレクトロニクス・ジャパンの金東建(キム・ドンゴン)氏に話を聞いた。

「LG styler」はブラックとブラウンの2色。「iFデザインアワード」や「レッドドットデザイン賞」を受賞するなど海外での評価も高い。気になる本体サイズは445(幅)×585(奥行き)×1850(高さ)mm、重量は約83kg。奥行きは一般的な冷蔵庫と同じくらいに感じる

 開発のきっかけは2002年頃。「ある役員が海外出張の際、前日に着たジャケットなどについたシワやニオイをなんとかしたいと悩んでいました。クリーニングに出すことはできても時間とお金がかかっていまいます。そんな悩みを妻に打ち明けたところ、『浴槽に熱いお湯を張って、浴室にジャケットを掛けておけばシワやニオイがとれるわよ』といわれ、実際に試してみると本当にきれいにとれたそうです。それがきっかけになりました」

LGエレクトロニクス・ジャパン、マーケティングチームの金東建部長

 その役員は、「“箱の中に放っておくだけで、スチームが洋服のシワをのばしてくれる製品”があったら売れるのではないか?」というアイデアを社内に持ち帰り、開発を命じた。だが、そんな製品は過去に例がなく、実際に企画開発が進むまでには3〜4年の歳月が掛かったという。「これまでなかったジャンルの製品であり、技術陣の元には設計図もなければ、どこから開発を始めたらいいかも分かりません。最初はかなり苦労したと聞いています。その後、いろいろと試行錯誤を重ね、2006年にようやくLG stylerの製品開発が動き出しました」

 アイデアを出した役員が白物家電部門の責任者でもあったからか、形状は大型家電の代表的存在である冷蔵庫をモチーフにした。「世の中に出回っているコートやスーツの大きさを測るなどしてデータを集め、大型冷蔵庫の中にハンガーやジャケットを掛けたりして、初代『LG styler』のサイズが決まったと聞いています。とはいえ、それ以上に庫内でどうしたら洋服が効率的に乾かせるのか、そのあたりを追求したことも開発が難航した理由です」

庫内には上着が同時に3着、さらにズボンを1着かけられる。棚にはウールのセーターなどを畳んで置いたり、ぬいぐるみを置くことができる

 これまで箱の中で乾燥させるものといえば、ドラム式洗濯乾燥機だったが、それはドラムという狭い空間で高温の熱風を吹きかけて乾かすもの。LG stylerは、それよりもむしろ業務用の乾燥室に近い。既に技術のあるドラム式乾燥機とは容積や形状がまったく異なるため、スチームや風の送り方など、根本的な手法から開発しなければならなかった。そこで開発されたのが「TrueSteam」と呼ばれる技術だ。

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