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» 2017年04月15日 08時00分 公開

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:次世代放送まであと1年! 活発な動きを見せる8K最前線(後編) (3/5)

[天野透,ITmedia]

麻倉氏:資料には、「海外でも人気の天ぷらに8Kで迫る。江戸前天ぷらに欠かせないタネの車海老や穴子、青柳の貝柱やかき揚げなどを、その具材から高精細でていねいな撮影で紹介。また、天ぷらの歴史や美しく揚げる高度な技術、油っぽさを感じさせない衣の作り方など、この映像では実用性も狙う」とあります。昨年のすき焼きは、サシの入った生肉が熱を通すことで焼けてゆく上質な脂身のテカリがうまそうだぞという、シズル感がとても良かったです。一方、今年、目を引いたのは衣を付ける前のタネの素材感でした。例えば貝柱のヌメッとした感じや、細かいウロコをまとった鱚(きす)のシルバーの魚体など、とても豊潤です。黄金色の油に咲く華のような泡のダイナミックな動きや浮遊感あるいは爆発感、これが実に食欲をそそります。一流の職人技による天ぷらというものは真にうまそうで、揚がったものはベチャベチャしていないんですね。それが画面を通してよく伝わってきました。

天ぷら調理の様子を8Kで収録した「The WASHOKU 天麩羅」。華やかに広がる衣と軽やかな油の音が食欲をそそる

――美食の世界は単に舌だけではなく、五感を使って楽しみます。テレビでは視覚と聴覚だけしか伝わりませんが、それでも油が踊る音や泡が弾ける様を見ていると、思わず天ぷらが食べたくなってきます

麻倉氏:それは重要なポイントですね、というのも、8Kは行動を誘うんです。つまり、圧倒的な高画質を前にするとアクションの中に本物感、誘引感が出てくるわけで、その映像美が「食べたい」「触りたい」という願望を引き起こします。ルーヴルのファン・エイクでも精緻な描き込みに感嘆しましたが、この天ぷらでも行動を起こしたいというものを持っていました。

天ぷらタネのきすを調理する様子。細かなウロコが輝く
エビや青柳などの魚介類には精緻な模様で覆われているが、そういった細部も8Kは鮮明に映し出す
右奥の衣にご注目。小麦粉が玉になって残っているが、これは不必要に混ぜすぎていない証拠。8Kはカラリと仕上げる職人技までしっかり捉えている

麻倉氏:次は博報堂の「和菓子 四季の美」です。先程の天ぷらと同様にこれも相当なシズル感があります。

 この番組に関してですが、2020年に向けて海外向けのコンテンツ需要が高まることを見越し、そこに向けた8K用の英語と日本語のテロップに関する実験、というのが要旨です。撮影は文京区の「一幸庵」という調進所が舞台で、このお菓子も本当に美味しそうですね。和菓子の基本である練り切りの白餡の素材感や、夏の涼を表現する葛の、七色に輝く反射感や透明感がとても美しいです。

――俳句や日本画など、日本文化は四季を表現することがままありますが、食文化は特にその傾向が強いです。和菓子は視覚で季節を訴えますから、高画質映像とは相性が良いですね

麻倉氏:スペックとしては8K/HDRのBT.2020(色域)です。高精細感と階調感を駆使することで、これまでのフォーマットでは再現できなかった、日本の美意識に根ざした“美味しい本物感”が出ています。見たい、触りたい、食べたい、という行動を呼び起こす、これも8Kの大きな魅力ですね。

麻倉氏:後編の初めに「前回は前座」と言いましたが、今回も実はここまでが“前座”で、私が本当に話をしたかった本題はこれからです。

――これだけ話してまだメインじゃなかったのですか

麻倉氏:注目のタイトルはキューテックの「ぶらっと江ノ電の旅」。プロデューサーの小池さんが主導した企画で、キューテックとしても初の本格的な8K番組制作です。

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