旅先でガイドブックに載っている定番レストランに物足りなさを感じつつも、せっかくの楽しい旅行を変に冒険して台無しにしたくない……。そんな「板挟み」を感じたことがある人は少なくないだろう。そんな人におすすめしたいサービスが「EatWith」。「ダイニング版Airbnb」とも呼ばれているのだ。
EatWithを使うと、地元ホストシェフ(プロ・アマ問わず)の自宅などで、そのシェフの手料理を「シェフとともに」食べることができる。地元のひとだけが知っているような情報を聞けたり、他の国から来た旅行者と知り合いになれたりと、食事を通じて多様な価値体験ができることがミレニアル世代を中心に人気が高まっている。トリップアドバイザーもEatWithの可能性に目を付け、2016年末に出資を行ったほどだ。
EatWithではAirbnbと同様にホスト(提供者)が登録されており、ホストシェフがどのような料理を、どれくらいの価格で提供しているのかをチェックできる。ユーザーは旅先のホストシェフを選び予約する。価格帯は1人当たり30〜100ドルほど。
EatWithの公式サイトによると、現在世界約50カ国200都市で650人のホストシェフが登録されている。登録数が多いのは、サンフランシスコやワシントン、ロンドン、バルセロナ、パリ、ミラノなどの大都市。大都市以外にも数多く登録されているので、チェックしてみてほしい。
EatWithは、イスラエル人の創業者が家族旅行でギリシャを訪れたときにひらめいたアイデアがもとになり、始まったサービスだ。この創業者は、ギリシャ旅行中毎日レストランで食事をすることにうんざりしていた。なぜなら、観光客向けに割高であまりおいしくない料理を出すレストランが多かったからだ。
そこで友人に相談したところ、地元で旅行者を招いて、手作り料理を振る舞っている女性がいると聞き、早速家族人数分の席を予約したという。そこで食べた料理があまりにもおいしく、その体験をもっと多くのひとに広めたいと始めたのがEatWithだ。
こうした背景があり、EatWithは単に食べるだけでなく、ホストシェフや地元コミュニティーの人々とのつながりや、地元での体験を提供することを重要と考えている。実際、そのような体験を提供するメニューが多く登録されている。
例えば、バルセロナでホストシェフと地元の市場をまわり、その市場で調達した具材でタパスやパエーリャを一緒に調理するといものがある。ガイドブックには載っていないような場所に行き、ホストシェフからスペイン料理の作り方を学ぶという貴重な「体験」を得られるとして非常に高い評価を受けている。
EatWithを利用するのは簡単だが、ホストシェフになるのはそれほど簡単ではなさそうだ。
ホストシェフになるには、まずEatWithのウェブサイトからオンライン申請することになる。この段階でチェックされるのは、手作り料理の写真、ダイニングする場所の写真、そしてソーシャルメディアのプロファイル。料理はおいしそうか、ダイニングの場所は清潔かどうか、などが評価される。
このオンライン1次面接を通過すると、次はEatWithコミュニティーによる「デモディナー」だ。EatWithを普段よく利用しているユーザーたちが、実際に料理の味やサービスクオリティーをチェックする。デモディナーの後、コミュニティーによるホストシェフの評価付けとレビューが行われ、その後EatWithの社内メンバーが評価とレビューを徹底的にチェックし、ホストシェフの登録認定を行う。
料理の腕だけでなく「おもてなし」サービスのクオリティーも高くないと、ホストシェフとして認定されない仕組みになっているようだ。EatWithがホストシェフに求めるものは、料理や会話からストーリーを伝え、人々を楽しませること。料理好き、かつ社交的な性格というのが必要条件になるのだろう。登録認定後も、一般ユーザーからのレビューを受けるので、ホストシェフは料理の腕とおもてなしクオリティーを下げないように努力する必要がある。
これはユーザーからしてみると、料理はおいしく、ホストは楽しい、という品質保証になるので、どの国でも安心してサービスを利用することができる。旅先で本当においしい料理が食べたい、地元ならではの体験を味わいたい、というひとにはおすすめのサービスだ。次の海外旅行で利用してみてはいかがだろか。
文:細谷元(Livit)
編集:岡徳之(Livit)
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