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スマート家電に“ココロ”をプラス シャープのAIoT戦略をひもとく(2/3 ページ)

» 2017年12月12日 14時33分 公開
[山本敦ITmedia]

製品・サービス・プラットフォームの三位一体でスマートホームを広げる

 中田氏はシャープが目指すスマートホーム事業は「製品」「サービス」「プラットフォーム」の三位一体による取り組みを基本にしていると説いている。製品についてはクラウドのAIサービスと連携しやすい環境をさらに充実させていく。家電をクラウドと簡単に接続するための「AIoTモジュール」も開発した。PCやAV機器に比べると商品のライフサイクルが長く、ユーザーの買い替えペースも緩やかな白物家電にインターネット接続の機能を持たせて、クラウドから常に新しい機能やサービスを提供していくためのコンポーネントだ。

 各種のサービスとの柔軟な連携を拡張するためにWebAPIの作り込みにも注力してきた。このAIoTモジュールとWebAPIを、スマート家電本体から切り分けるかたちで用意したことで、上位モデルからスタンダードモデルまで、今後シャープの様々な家電が“スマートAIoT化”していくための下地が整った。中田氏は「今後シャープではミドルからエントリーモデルまで全てのスマート家電のAIoT化を目指す」と述べている。

 サービスも10月から、ヘルシオシリーズ向けに10月からスタートした「ヘルシオ・デリ」を例にスマート化を加速させている。ぐるなびが開発したヘルシオ向けのかんたん調理レシピを、タイヘイが調理・加工した料理キットにして家庭にデリバリーする。ユーザーにとってはヘルシオの自動調理機能の魅力を実感できる使い方が広がりそうだ。

 ヘルシオシリーズのAIアシスタントの特徴について、中田氏がポイントを次のように語っている。「音声コマンドを認識してからテキスト化するところまでのエンジンについては、その時々にベストな技術を採用しますが、テキスト化されたコマンドの使いこなしにシャープ独自の味付けを加えています。具体的にはヘルシオで調理メニューを選択する際には“お話ボタン”を押して音声アシスタントを起動後、ほぼ数回の会話をやり取りするだけでメニューを決めて、すぐに調理を始められるように設計しています。ユーザーが“急いで作れるメニュー”を、いつも特定の時間に選択して使っている傾向をヘルシオが学習して、その時間帯には素速く急いで作れるメニューをレコメンドしてくれるようなココロ配りも次第に身につけて行きます」

シャープのAIoTスマート家電はどのように連携していくのか

 シャープのスマート家電はそれぞれにキャラクターの際だった機能やサービスを実現しているが、独自のAIoTプラットフォームの中で連携しながら実現している機能はまだ少ないようにも感じる。その点については中田氏は現在、意識しながら取り組みを整えている段階であると回答している。特に液晶テレビとロボット型ホームアシスタントが大事な役割を担うキープレーヤーになりそうだ。

 「AIアシスタントの発話など音声のインタフェースによって、わざわざ画面に目を向けなくても製品がコントロールできたり、動作状態を知ることができます。でも、音声だけでは、AIアシスタントが検索してくれた情報を文字で確認したいときに不便です。これからは音声とビジュアルを組み合わせて快適に使えるインタフェースを作ることも大事と考えています」(中田氏)

AIoTのスマートホームの中核として、AQUOSシリーズのテレビとホームアシスタントによる連携が重要な役割を担うことになりそうだ

 シャープは11月に、AQUOS 4K液晶テレビに初のAndroid TV搭載モデルとなる「UH5/US5」の2シリーズを発売した。それぞれに「COCORO VISION」のクラウドサービスに対応するテレビだが、今後は他のココロプラス系サービスにつながって、シャープのスマート家電をテレビでコントロールして、ステータスを画面に表示できるような仕組みも考えられる。同じようにロボット型ホームアシスタントを機器連携の中軸に置いて、これに何らかのディスプレイ機器を外付けしていくことも難しくなさそうだ。

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