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スマート家電に“ココロ”をプラス シャープのAIoT戦略をひもとく(1/3 ページ)

» 2017年12月12日 14時33分 公開
[山本敦ITmedia]

 シャープはAI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を結びつけるという考え方からスマート家電とそのサービスの開発に力を入れている、国内でもスマート家電の最先端を行く注目のブランドだ。今回は同社IoT通信事業本部の中田尋経部長に話を聞きながら、シャープのスマート家電の戦略を探ってみたい。

シャープのスマート家電について話してくれたシャープ IoT通信事業本部 IoTクラウド事業部 プロダクトマーケティング部の中田尋経部長

ココロをプラスした家電は8種類、5つのクラウドサービスも誕生

 シャープでは家電を単なる日常生活に必要なツールとしてだけでなく、ユーザーが愛着を持って使いたくなるような要素を、アップデート可能なクラウドサービスも活用しながら提案することをテーマに掲げた。話題のAIや音声入力によるユーザーインタフェースの開発にもいち早く取り組んできたシャープが推進しているのは、AIをココロ配りのできるパートナーに育てていくという「COCORO+」(ココロプラス)プロジェクトだ。

 2017年12月現在、ココロプラスのプロジェクトからは8種類の商品カテゴリーと5つのクラウドサービスが発表されている。それぞれクラウドサービスを基準に製品とのペアリングを紹介しよう。

“AIやロボットのシャープ”のイメージを高めた「ロボホン」。現在LTE対応のセルラーモデルとWi-Fiモデルが発売されている。欧州でも販売がスタートすることになりそうだ

 1つがスマートフォンとロボットが合体した「ロボホン」と「ココロ プラン」のペアだ。ロボホンとお話ししたり、情報サービスを利用するため必要になる、いわば通信契約サービスだ。ロボホンにはセルラー通信対応機とWi-Fi専用モデルがある。

「ココロ エモパー」を搭載するスマートフォン「AQUOS R」

 2つめのペアは「AQUOS」シリーズのスマートフォンに搭載されているAIアシスタントの「ココロ エモパー」だ。2014年にNTTドコモが発売した「AQUOS ZETA SH-01G」に搭載された、人工知能「ココロエンジン」から生まれた、日本語対応のパーソナルアシスタント「エモパー」が今日も進化を続けている。AIアシスタントが自らユーザーに話しかけてきたり、ユーザーに「ココロ配り」をしてくれるところが他のAIアシスタントと比べた時の違い。

 ココロ エモパーでは、3種類の音声キャラクターを選ぶことができたり、単純に日本語が話せるというだけでなく日本人が心地よく使えるAIアシスタントを目指す。中田氏は「ココロ エモパーが家族や恋人以上のやさしさを追求したAIエンジン」であることを強調している。ユーザーに“ねぎらい”の言葉をかけたり、AIが話しかける内容も絶えずアップデートで進化を続けている。端末を買い替える時にも、Googleアカウントにひも付けてバックアップを取っておくことで「ココロ エモパー」の記憶は引き継げる。ユーザーとの絆を強く意識したユニークなAIエンジンだ。

AQUOS 4KシリーズにもAndroid TV搭載機が発売された。「COCORO VISION」のコンテンツレコメンドとの相性がさらに良くなっている

 3つめのペアは、液晶テレビ「AQUOS 4K」のエンターテイメント視聴を便利にするクラウドコンテンツ配信「COCORO VISION」。AIがテレビを使う家族の視聴傾向を自動学習したり、人感センサーと連動してユーザーがテレビの前に座ると自動で電源が入り「COCORO VISION」が起動。おすすめコンテンツをプッシュしてくれる。まるでテレビの中にパーソナルアシスタントが住んでいるような使い心地を実現しているという。「COCORO VISION」はおすすめのコンテンツ情報を通知してるスマホアプリにもなっている。

ヘルシオシリーズのウォーターオーブンとホットクックはともに「COCORO KITCHEN」のサービスに対応

 4つめは「COCORO KITCHEN」のサービスと連動する、「ヘルシオ」シリーズのウォーターオーブン、水なし調理鍋(ホットクック)、さらにはプラズマクラスター冷蔵庫だ。それぞれクラウドのAIにつなぐと音声での操作設定や献立を相談などができる。ウォーターオーブンと調理鍋での調理に最適な食材を届けてくれる料理キット宅配サービス「ヘルシオデリ」もある。プラズマクラスター冷蔵庫「SJ-GXシリーズ」はユーザーが音声でコマンドを入力する代わりにドアにタッチ液晶を設けてスマートに操作ができる。

プラズマクラスター空気洗浄機「KI-HX75-W」とエアコン「AY-H40X2」。ともに「COCORO AIR」のサービスに対応する

 そして5つめのサービスが「COCORO AIR」だ。プラズマクラスター付きの空気清浄機とエアコンに対応するサービスで、AIがユーザーの住む地域の空気情報を分析しながら、快適な空気環境になるよう運転を自動調節するというもの。ユーザーの習慣を学習して、就寝前の「おやすみ運転」モードを自動設定してくれる機能もある。

シャープが開発中のロボット型ホームアシスタント。独自のAIアシスタントを搭載予定
プラズマクラスター冷蔵庫「SJ-GXシリーズ」はユーザーが音声でコマンドを入力する代わりにドアにタッチ液晶を設けてスマートに操作ができる

 このほかにもシャープは独自に“人と会話できるロボット”の開発にも取り組んでいる。「ホームアシスタント」と仮に名付けられているロボットは今年もCEATEC JAPANなどのイベントに試作機によるサービスが紹介された。こちらの製品はどちらかといえばBtoB向けの色合いが強く、「ホテルやレストランの受付」「ショップの案内」「イベントの演出」など特定の業務・商用にカスタマイズした用途への引き合いが多くあるようだ。

 中田氏によれば、シャープでホームアシスタントのBtoB向け用途の実証実験を多業種のパートナーと始めているという。一見すると「Google Home」や「Amazon Echo」のようなAIエンジンを搭載したスマートスピーカーのようにも見えるが、どちらかといえばコミュニケーション型ロボットの色合いを強く帯びた製品だ。応答シナリオを半自動で生成するチャットボット型のAIアルゴリズムを搭載して、カスタマーサポートなどの用途にも素速く正確な問題解決を提供できるロボットを目指す。

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