2017年の「デジタルトップテン」も、残すところあと3つ。ここに並ぶものはいずれも“人間の業(わざ)”が成せる、人と技術の深遠な関係を見つめるものだ。そうして作り上げられた製品や規格を通して、人間性を徹底的に追及する、今も昔も、麻倉怜士氏はオーディオ・ビジュアルを通してそんな世界を追い求め続ける。デジタル閻魔帳、総決算。さあ、人間の仕事を味わおう。
――第3位に入る前に、何やら先生からご報告があるとのことです。
麻倉氏:実はこの度、潮晴男先生と共同で「UAレコード合同会社」という音楽出版社を設立しました。その第1回作品を2018年1月にリリースしますので、この場を借りてお知らせします。
UAレコードの制作方針は「最高の音楽を最上の音質で」です。第1作目の具体例を挙げると、
といった点にこだわりました。これは私の「音楽ラバー」と「オーディオラバー」のクロスオーバーによるもので、生演奏が持つ音楽性を極限まで追求することを試みています。
麻倉氏:従来のオーディオ評論では、音は優れていても音楽性に疑問を持つような論調がしばしば見られました。ですが、それはやはりおかしい。オーディオによる良い音の追及はあくまで音楽をより深く味わうためであって、それを抜かしたままで音だけを語るのは、私は本末転倒だと思います。
ならばオーディオリファレンスにも耐えうる良質な音楽を、自分で作ってしまおう。音だけではない、音楽だけでもない、この2点が互いを高め合い、芸術性の境地“Ultra Art”を切り開くことが、UAレコードの目的です。
第1回リリースは、UHQCD「情家みえ・エトレーヌ」。2018年1月17日発売です。情家さんは東京西青山のジャズクラブBody&Soulを中心に活動している“情感派”のジャズシンガーです。
「エトレーヌ」はフランス語で「贈りもの」。「情家みえからの素敵なジャズボーカルの贈りもの」という意味を込めています。本アルバムでは山本剛、後藤浩二という日本を代表するジャズピアニスト・バンドと協演しています。山本剛をバックにした情家さんは「叙情」「情感」が味わい深く、後藤浩二と共には「軽快なドライブ感」「俊敏なグルーブ感」を聞かせてくれます。音質的にはベースのスケール感、音階感、ドラムスの俊敏性、優しさ、ピアノのリリカルさ、レンジ感、ヴォーカルの多彩なニュアンス、色気、グロッシーさ……など、多数の聞きどころがあります。
ホームオーディオ、ポータブルオーディオ、カーオーディオの各場面で、検証用のリファレンス音源として活用していただくため、徹底的に音楽性と音質にこだわって制作いたしました。シビアな音の追及はもちろん、高音質がもたらす豊かな音楽に耳を傾けてもらえればと思います。
麻倉氏:曲目は山本剛バンドをバックにしたスタンダードジャズと……
後藤浩二バンドをバックにしたオールディーズ系ジャズです。
UAレコードは「高音楽性と高音質」を基本方針に、ジャズ作品を創造していきます。今後とも応援、よろしくお願いいたします。
――いやはや、ついにレコード会社まで作ってしまいましたね。その飽くなき追求心に、ただただ敬服です
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