普及段階に入った「SeeQVault」、メーカー間の互換性は確保できず:CEATEC JAPAN 2014
USB外付けHDDの録画番組がその機器でしか再生できない、いわゆる“機器バインド”からの脱却に向け、期待されている新しいコンテンツ保護技術「SeeQVault」(シーキューボルト)。しかし、いざ普及段階に入ろうとするタイミングで残念なことが分かった。
パナソニックから対応テレビとレコーダーが発表され、注目を集めている「SeeQVault」(シーキューボルト)。USB外付けHDDの録画番組がその機器でしか再生できない、いわゆる“機器バインド”からの脱却を目指している。「CEATEC JAPAN 2014」のブースには昨年をはるかに超える対応機器が並び、普及段階に入ったことが伺えるものの、一方でメーカー間の互換性は確保できないことが分かった。
SeeQVaultは、フラッシュメモリやHDDなどのストレージ向けコンテンツ保護技術。パナソニック、サムスン、ソニー、東芝の4社が開発し、現在はカリフォルニアに本拠を置くNSM Initiatives LLCがライセンスを管理。ライセンスを受けた企業は16社で、Silicon MotionやCyberLinkといった台湾企業も名を連ねるようになった。
SeeQVaultの特徴は、AES 128bitやPKI認証、製造時に埋め込まれる固有ID(EMID:Enhanced Media ID)を活用した強固なセキュリティ、そしてSeeQVaultに対応するさまざまな機器での再生互換性だった。例えば、リビングルームのテレビでUSB外付けHDDに録画し、それを寝室のBDレコーダーにつないでも再生できる。しかし、ふたを開けてみると、「同じメーカーの製品同士なら」という注釈が付くことになった。
理由は、外付けHDDに録画する際のファイルシステムだ。一般的にHDDなどはFATやFAT32、exFATなどを使うことが多いが、テレビやレコーダーの多くは組み込みLinuxをOSに使用するケースが多く、ファイルフォーマットはXSFなど。さらにメーカー間でも細かい差異がある。ソニーでメディア規格を担当し、NSM Initiatives LLCにも所属している鈴木健二氏によると、「もともとSeeQVaultでは、その違いも吸収するつもりで調整を進めてきたが、フォーマットの統一ができなかった」という。メーカーが今まで使っていた独自拡張とそれによって付加した機能など「“過去の資産”を捨てることができなかった」(同氏)ためだ。
つまり、あるメーカーのSeeQVault対応テレビとレコーダーなら、1つのUSB外付けHDD(SeeQVault対応)をつなぎ替えても使える。またテレビを買い替えた場合も、同じメーカーのSeeQVault対応製品からの買い替えであれば同じ外付けHDDを継続利用できるはずだ。しかし、他社のSeeQVault対応レコーダーに接続すると、「フォーマットしますか?」と言われてしまう可能性が高いという。
東芝メモリ事業部の三村英紀氏は、「99%の互換性はあるが、1%の“過去のしがらみ”を捨てられず、メーカー間の互換性は確保できなかった。残念な結果だが、製品発売後にユーザーが混乱しないよう、メッセージを出していきたい」という。また鈴木氏は、NSM Initiatives LLCの立場で「今後、メーカー各社が歩み寄って機器の相互運用性に関して調整を進めることを期待している」(鈴木氏)と話している。
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