スゴイ技術に驚いた2016年“白物家電”ベスト5:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(3/3 ページ)
2016年も数多くの新製品が発表された白物家電市場。今年はどちらかといえば“マイナーチェンジの年”だったが、中にはキラリと光るものも。2016年のスゴイ白物家電を5つピックアップして振り返りたい。
鋳物メーカーが作った炊飯器、愛知ドビー「バーミキュラ ライスポット」
愛知ドビーの「バーミキュラ ライスポット」は、最適に炊飯できるよう新たに型から起こした専用のホーロー鍋と、適切な加熱を行うため生み出されたポットヒーターのセットだ。ごはんは0.5合単位で最大5合まで炊ける。また、おかず調理機能も搭載しており、30〜95°Cでの低温調理が可能だ。
これだけ書くと、単なる鍋とIHヒーターを組み合わせただけの製品にしか思われないかもしれない。だが、土鍋などを使って日常ごはんを炊いている人は分かると思うが、鍋で常に美味しく炊くというのは実は一筋縄ではいかない。火加減の調整が非常に繊細で、ちょっと目を離していると吹きこぼれてしまったり、焦げてしまったり。
そのために専用の鋳造鍋を開発するとともに、炊飯器のように使う以上、吹きこぼれないようにすることが一番の課題だった。最終的にはふたにフローティングリッドという凹みを作り、鍋の中に圧がたまったときだけ蒸気が逃がせる仕組みを開発するなど、細かい部分まで工夫がみられる。
鍋底のリブ形状も同様に改良を何度も試みる。元々バーミキュラには決まった形状のリブがあるものの、これはあくまでも一般のバーミキュラのホーロー鍋のもの。野菜調理メインのものだったため、炊飯専用のリブも開発した。ひたすらトライ&エラーを繰り返し、20パターン以上のリブ形状を考え、ようやく製品版に辿り着いたという。
また、愛知ドビーには鍋の開発経験はあっても、IHなどの熱源を作ったことはない。にも関わらず、理想の熱源がないと最高のごはんは炊けないということで自ら開発に着手した。
なかなか炊き加減が安定することがなく、どうしても炊きムラがでるなど開発は難航したという。また、ごはんがせっかく炊けても、もともと得意とするおかずが美味しくできないといった新たな問題も発生。このため、バーミキュラ ライスポットは発表から1年間も発売を延期することになった。
だが、そんな困難をも乗り越えた。ガスの火は周りの空気も温めているのに対し、IHは鍋底だけを温めていることが主な要因であることに気づき、最終的にはIHでありながら、ガスならではの立体加熱を実現。コイルの巻き方や配置にまでこだわることで、底面のハイパワーIHコイルと側面のヒーターで包み込むように加熱する。同時に、炊飯プログラムもこの火力に合わせて開発したという。
高級炊飯器にも負けないほどのしゃっきり系の美味しいごはんを、家電メーカーではなく鋳物メーカーが、まったく新たなアプローチで実現したことは、白物家電業界にとって、今年一番の画期的な出来事といっても過言ではないだろう。
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