2007年12月22日、東京の道路地図に太い1本の線が描き加えられた。首都高速道路中央環状線の「山手トンネル」(4号〜5号)の開通である。東京在住者ならばすでに通った人もいるだろう、山手トンネルは東京都道317号環状6号線、通称「山手通り」の地下を走り、新宿と池袋や埼玉方面を結ぶ新たな都市動脈となっている。
かくいう筆者も、山手トンネル完成後に度々利用している。筆者の自宅が足立区ということもあるが、新宿からのアクセスがすこぶる便利になったことを実感している。一般道の山手通りも長い工事が終わって再整備され、走りやすくなるとともに景観が向上した。
振り返ると2007年は、新設道路の完成ラッシュであった。大きなところでは、圏央道の「あきる野〜八王子区間」の開通、館山自動車道の「君津IC〜富津中央IC」の開通、そして昨年末の「山手トンネル」開通だ。これ以外にも、全国各地で主要道の新設や開通が増えている。さらに道路以外では、高速道路上のSA/PA内に設置されたETC専用の出入り口「スマートIC」の整備や社会実験が増えており、直近では今年2月16日から東海環状自動車道の鞍ヶ池PAでETC専用の出入り口が開設される。
交通渋滞の緩和と、それによるCo2削減や社会損失の軽減。そのような社会ニーズの拡大を受けて、道路の新設や効率化を図る改変は年々増えてきている。道路は変わり続けているのだ。
一方、道路の変化に、DVDやHDDを地図保存メディアとして使う従来型のカーナビは追いつけなくなっている。特に最近は、カーナビが過去の渋滞情報を分析し、効率的な渋滞回避を行う「渋滞予測」対応カーナビが増えてきているが、その前提となる地図が古くては正確な渋滞分析ができない。
「主要道路のネットワーク変化は、交通流に多大な影響を及ぼします。先の圏央道の例でいえば、その完成によって国道16号線はもとより、環状8号線や7号線、さらにはもっと小さな一般道の流れまで変わりました。これらを正確に把握・分析するには、サーバによる地図のリアルタイム更新と、渋滞情報の収集システムが必須になっています」(本田技研工業インターナビ推進室室長の今井武氏、参照記事)
ホンダやトヨタ自動車では、このような道路環境の変化を受けて、自社製カーナビゲーションの地図を通信経由で更新する仕組みを用意している。例えば、ホンダの「インターナビ」では昨年12月22日の山手トンネル開通直後から、カーナビ地図が更新されて“山手トンネル”を加味したルート検索が可能になっていた(参照記事)。トヨタの「G-BOOK mX」(参照記事)でも、今月22日の地図一斉更新で山手トンネルを含む、15ヶ所の新設道路やPA/IC改変に対応した。
以前も本コラムで述べたとおり(参照記事)、カーナビの将来トレンドは「古くない地図」の実現であり、その上で様々なサービスやビジネスが実現されていくだろう。そして最終的には、地図そのものはサーバ上に置き、カーナビはそれをキャッシュ(一時保管)してナビゲーションする世界がやってくる。
自治体など道路行政側も、次第にではあるが、こうした「古くならない地図」の実現に協力する姿勢になっている。例えば沖縄県では、新設道路の工事図面をインターネット上で公開する仕組みを全国に先駆けて導入している。さらに昨年12月には、埼玉県も新規開通道路の情報開示を発表。最初の提供先としてホンダの「インターナビ」が選ばれた。
「地図のリアルタイム性を保つためにも、自治体との連携はとても重要になっています。この分野では沖縄県と埼玉県が先行しましたが、最終的には日本デジタル地図協会(DRMA)がとりまとめる方向がいいでしょうね」(今井氏)
地図のリアルタイム化を進める流れは速さを増してきており、先行するホンダやトヨタはもちろん、日産も今年には地図のリアルタイム更新に対応しそうだ。さらに市販カーナビの世界でも、ハイエンドモデルの通信対応だけでなく、現在、急速に勢力を伸ばすPND※が通信対応して“ネット端末化”するシナリオも考えるだろう。
地図のサーバシフトが進めば、GPS携帯電話との連携や、その上での新ビジネスの芽もでてくる。地図を取り巻く環境変化は今後の注目ポイントである。
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