ロンドンに拠点を置くHSBCは1月31日、金融資産1000万円以上を対象にした「HSBCプレミアセンター」を赤坂と広尾にオープンする。赤坂支店はプライベートに配慮してコンサルティングルームを12室設置、顧客1人に専任担当者を付けて「ニーズに合わせた資産形成を手伝っていく」(HSBC)という。営業時間は赤坂、広尾両支店とも、月〜土曜日の午前9時から午後7時まで。
HSBCグループは83の国と地域に1万を超える拠点があり、2007年6月末現在2兆1500億ドルの資産を持つ。グループの母体は香港上海銀行で、日本では東京と大阪に支店があり、主に法人向けの金融業務を行っている。ただ団塊世代の退職者が増えていく中で、リッチ層の市場が拡大すると判断。HSBCでは金融資産1000万円以上を保有する人が東京と大阪で630万人いると見込んでおり、こうしたリッチ層の囲い込みを図っていく方針だ。
まずは赤坂と広尾に支店を設け、2008年中に首都圏に6店、関西圏に1店出店する予定。さらに今後5〜10年後には、50店を出店するという。
現在、日本の個人金融資産は約1500兆円で、その半分は預貯金だ。政府が掲げる「貯蓄から投資へ」という動きに合わせ、HSBCでは資産運用サービスに積極的な姿勢を見せている。
HSBCが扱う金融商品は円・外貨預金のほか、投資信託、保険商品などで、HSBCグループ香港上海銀行・個人金融サービス本部のフランソワ・モロー氏は「家計と資産運用ニーズに適したベストな商品をそろえていく予定」としている。
さらにHSBC傘下の香港上海銀行を通じ、HSBCプレミアでは住宅ローンと不動産投資ローンを取り扱う。住宅ローンの融資限度額には上限がなく、利息計算には「預金連動型」と「しない型」(通常の変動または固定金利)から選択が可能。預金連動型とは預金残高と同額の借入金額には金利がかからないため、預金とローン残高が同じになれば実質金利が0%になる。預金連動型の住宅ローンは、すでに新生銀行や東京スター銀行などで取り扱っている。
不動産投資ローンも融資限度額を設定していないため、都心の高級マンションなどの資金に利用できる。利息計算は預金連動型も選択でき、永住権を持たない外国籍の人でも利用できるのが特徴だ。
これまで外資系金融機関といえば、米国の金融機関「シティグループ」がリッチ層向けに営業を展開してきた。しかし2004年にシティバンクは金融庁による処分を受け、4店の営業認可取り消しや新規の外貨預金業務を一時停止させられた。これを受けシティバンクは主要業務からの撤退を余儀なくされたが、2007年7月にシティバンク、エヌ・エイ在日支店の業務を引き継ぎ、5店で営業をスタート。日本を重要な市場と位置付けているシティバンクは、数年以内に店舗数を2倍に拡大させる方針だ。
さらに日本での業務につまづいたのは、米国の金融機関「メリルリンチ」だ。1998年に破たんした旧山一證券の社員と店舗を引き継ぎ「3年で黒字転換」の目標を立てた。しかし初年度に260億円の赤字を計上、欧米流の営業手法を展開したものの、顧客離れに歯止めをかけることができず、2002年に事業を大幅に縮小した。
これまで外資系金融機関は、日本市場で失敗を繰り返してきた。現在はサブプライムローン問題(低所得者向け住宅ローン)の影響で、「日本事業を縮小させるのではないか」といった懸念もあるが、リッチ層の金融資産をめぐって、顧客争奪戦を繰り広げそうだ。
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