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» 2008年05月20日 15時09分 公開

まるで書斎のようなトイレ、こだわりは「音」と「色」それゆけ! カナモリさん(3/3 ページ)

[金森努,GLOBIS.JP]
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3月14日、ハードルは高くして跳べ

 顧客満足度調査のアンケートシートを前にしたとき、あなたはアベレージでいくつを付けるだろうか。そして、どんなときに「非常に満足」の5を付けるだろうか。

 顧客満足度調査の場合、総じて日本人は暗黙の了解としてアベレージ3ぐらいを中心に採点する。対して米国では5がアベレージで不満を感じたときに点数を減点するようだ。

 日経ビジネスオンライン(NB online)でそんなコラム「危機感駆動型ニッポンの危機!? ネガティブなニュースの濁流に流されるな」を読んだ。コラムでは、満足度調査だけでなく、教育においても両国の違いは「褒める米国、けなす日本」であると指摘する。そして要諦は、日本はニュースの記事の取り上げ方もネガティブアプローチで、「危機感駆動型」であるが、そうしたスタイルでは今の閉塞した経済環境を打破できないというものだ。

 そのコラムの主旨にも賛同しつつ、前段の満足度調査の部分が特に気になった。コラムによると、筆者は、米国で車を購入した際に、自動車メーカーから電話がかかってきて、販売店のサービスに対する満足度調査を受ける。普通に満足していたので、5段階のうち、「とても良い(Very Good)」「良い(Good)」を中心に回答したところ、後日販売店の担当者から「何か問題があっただろうか?」と慌てて連絡があった。米国人の感覚では、「素晴らしい(Excellent)」以外は「問題あり」を示すバッドスコアなのだという。

 確かに、今もホテルでこの記事を書いていて、満足度調査のシートが目の前にあり、評価が5段階になっている。「ホテルの建物は少々古いが整備されていて、清掃に不備もない。顧客応対にもそつがない。普通に満足できているので3か、まぁ、サービスして4かな」と、日本人的感覚で考えていた。しかし、その結果を受け取る側の立場で考えると、また別の見方ができることに気がついた。

 以前、企業で管理職をしていたときのことだ。部下の業績評価をめぐってしばしば役員と対立した。上司の評価として「多大な功績を挙げた」の5を付ける。定量的な業績貢献も、定性的な目標達成度も高く、目標管理制度(MBO)との整合も高い。しかし、役員からは安易に最高点を付けるなとたしなめられた。「最高点のサービスしすぎは成長の芽を摘む」との理由で、「求めてもなかなか手に入らないからこそ、最高点は意義があるのだ」と。

 「あまりに手に入らないのであれば、最高得点は取れなくて当たり前になってしまう」と反論するも、一項目でも5を認めさせるのはかなり至難の業だった。

 独立して、現在、仕事の3分の1は講師業をしている。講演、企業やビジネススクールでの研修、大学での授業。昨今はその1つひとつで、講師は受講者から評価を受ける。独立する以前から、講演活動は時々やっており、そこでの受講満足度アンケートを見たときに、そこそこ4や5が付いているのを見ると、嬉しく思った。

 しかし、大勢のオーディエンスを前に、主に一方的に話す講演と異なり、インタラクティブな要素が多く、個々の受講生の顔や動き、発言に注目することができる研修では、受講生からの満足度の意味が異なるように感じるようになったのだ。受講生には学びを最大化して欲しい。それ故に、1つでも分からないことをなくしたいと考える。だとすると、5ではなく4や3を付けるということは、学びに対して「不満足」というよりは「不十分」な部分があったというメッセージだと理解するべきだと考えたのだ。つまり、自らの受け取るべき得点のアベレージを3ではなく、5とセットし直したのである。

 先の役員の言葉「求めてもなかなか手に入らないからこそ、最高点は意義があるのだ」ではなく、米国式の5以外は「問題あり」のバッドスコアという認識の方が実は遙かにハードルは高まる。しかし、認識を変えハードルを自ら上げることによって緊張感も高まる。受講者の一挙手一投足も見逃せない。自分の発言にも最大限の留意をするという、動き方も変わってくるのだ。満足度のアベレージが5ということは、付ける側は甘く、付けられる側はおごりと思ってしまいがちだが、遙かに緊張感のある関係なのである。

 さて、今日もこれから企業研修だ。取れればラッキーの5ではなく、当たり前な5となるべく、研さんを積もうと考えている。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディ アへの出演多数。 一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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