メンバーが会議室から出て行くと、また誠は星野と2人だけになった。
誠 みんなの言うとおり、僕は実力不足なんでマジで落ち込んじゃいますよ。時間配分のために前もってアジェンダを準備したし、説明用資料も用意してもらったのに、結局時間が足りませんでした。
星野 確かに仕切り方にも問題があるけれど、あなたにはその前の「段取り」のやり方にも課題がありそうですね。
誠 「段取り」のやり方ですか?
星野 あなたは少なくとも坂口さんと仲居さんの考え方や性格をよく知っているのでしょう? だとしたら、坂口さんには発表時間厳守を念押ししなくちゃいけなかったし、仲居さんが販売部を心良く思ってないことを配慮して山口さんに指示しておかなくちゃいけないんですよ。
誠 えっ、そこまで考えておかなきゃいけないんですか?
星野 ファシリテーターとして上手に仕切りたいのなら、そこまで考えないといけませんね。それに各人が自分勝手な話にならないよう、うまく話に「介入」する必要があります。
誠 先日もおっしゃってましたけど、その「介入」するってどういうことですか?
星野 話し手が時間オーバーしたり、こちらの想定を外れたりしたら、すかさず質問を挟んで話の要点だけを聞き出すのです。気持ちよく演説している相手に割り込むのには多少勇気が要りますが、聞き役だけできても一人前とはいえません。それに演説内容が聞き手に与える影響を察知して、時には話を中断させなくてはなりません。参加者全員が同じ認識に立つとは限りませんからね。このプロジェクトでは、メンバーは所属部門ではなく常にチームの利益を1番に考えなくてはならないのです。
誠 つまり、前もって段取っておくことと、討議の場では目的を一致させることが大切なんですね。
星野 最終的に討議の場を制圧できるのは、リーダーのあなたしかいないのですよ。そのためには「グラウンドルール」のようなツールも知っておいたほうが便利でしょう。さあ、いちいち落ち込んでいる暇はありません。とにかく場数を踏むのがファシリテーション上達の早道ですからね。
星野の話がどこまで理解できたか若干不安ではあったが、なんとなくホッとした気分になった誠だった。(第5話に続く)
ジェネックスパートナーズ取締役会長。ゼネラル・エレクトリック(GE)で、シックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルト(専従リーダー)として参加後、経営コンサルタントに転身。
2002年11月、お客様とともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から、お客様の成果実現のために企業変革を支援し、事業価値向上に貢献するプロフェッショナルファーム「ジェネックスパートナーズ」を設立。日本企業再生を目指して、企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』などがあり、中国、韓国、台湾等でも翻訳出版されている。
「誠」世代が“自立する=自ら考え正しく行動できる”ことが、今後の日本経済を支えるといっても過言ではありません。社会に出たビジネスパーソンとして自立するためのきっかけは誰にでも必ずありますから、そのチャンスに果敢にチャレンジしてほしいと思います。
しかしその際、気合と根性だけでは徒手空拳も同然。本連載でご紹介するようなビジネスリーダーとしての心構えと基本動作を身に付けておいたほうが無難でしょう。これらは難しく考えるのではなく、実際に試してみることが大切です。
本連載の主人公・誠は、おっちょこちょいではありますが、好奇心と向上心を持ち合わせたがんばり屋です。誠のように『天は自ら助くるものを助く』の精神でプラス思考で臨んだリーダーこそが、最後にはきっと生き残るのです。
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