「天下り」に「渡り」……いろいろあるけど、官僚問題の“急所”はココ山崎元の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年02月05日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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微妙な問題を残す「天下り禁止」

 「天下り禁止」が微妙なのは、関連する民間会社への転職を封じられると、官僚という就職先の魅力が大きく減少するからだ。将来の働き方の可能性を制限されるのは痛い。「回転ドア」と呼ばれる米国式の官民交流型の人事制度は、官民の癒着に問題はあるかもしれないが、働く側からすると魅力的だ。関連業界への再就職を認めつつも、官民の癒着には刑事・民事両方で大きなペナルティを課するという制度の組み合わせにも一考の余地があるかもしれない。

 官僚問題の論文を書いた当時は、実効性のある官民癒着の防止策は現実的には不可能だから監督する側(官)とされる側(民)の人事交流には一定の制限が必要だと考えた。だが先日、キャリア官僚出身の政治家と話していたら、「天下りを認めても認めなくても癒着なんてあるんだから、天下りを認めてもいいのではないか」という、がくぜんとするけれども、現実的な反論をいただいた。人事制度の問題とは別に、官民の癒着に対する対策を考えなければならないということだろう。

総理大臣官邸

就職先として公務員は魅力的か?

 「天下りの可否」と「官僚の報酬」が官僚という就職先の魅力全般を通じてつながっているように、官僚の人事制度問題では、(1)官民の人材交流の有無とルール(天下り制限の有無と、制限する場合のルール)、(2)官僚における「クビ」の有無、(3)公務員の報酬制度・評価制度など、複数のポイントをセットで考える必要がある。

 就職先としての公務員の魅力は、現在落ちているはずだ。昨今の不況で、就職先としての公務員の人気が高まっているようだが、キャリア官僚(上級職)については、ここ数年、優秀な学生が公務員をあまり希望しなくなったと言われている。後者については、外資系金融機関の魅力の急低下などで、公務員人気の一時的な復活もあるかもしれないが、世間的なムードとして“公務員叩き”は止む気配がない。そのためプライドや夢を抱いて公務員に応募しようとする学生が減っている可能性がある。

 学生当時の筆者は、価値観の持ち方として公務員に共感を感じなかったので民間企業への就職しか考えなかったが(結局、総合商社に就職した)、後から転職することも考慮に入れると、経験として公務員は面白かったかなとも思う。

 これから就職を考える学生も、公務員、留学、民間企業といったキャリアパスには一考の余地があるだろう。ただし、あまり長期間公務員でいると、民間企業に馴染むことが難しくなりそうだから、キャリアの作り方は難しい。もちろんその場合も、公務員の経験を仕事に有効に使うのはいいが、官民のアンフェアな癒着には手を染めない節度を期待したい。

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