初心者が読むべき投資入門書とは――金持ち父さんへの道現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(3/3 ページ)

» 2009年06月02日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]
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3つの要因別の参考書籍は

 上記の話を念頭に置いた上で、参考書籍をご紹介したいのだが、いかんせん筆者自身耳勉強で済ませている話が多いうえ、分析手法によってはなかなか良い書籍がないので困っている。とはいえ、とりあえず、要因別のオススメ書籍を紹介しよう。

マクロ要因の参考書籍

 はっきり言えば、これは日米のマクロ指標やニュース、株価をリアルタイムで追っていき、何がどのような関係にあるかを肌で感じなければ仕方がない。また、金融の世界では株式そのものだけではなく、先物やオプションもあれば、債券や短期金利、為替が大きなプレゼンスを占めている。だから、Agentsも株式投資のサークルなのに、債券の専門書を持っているメンバーがちらほら増えている。

 しかし、やはりこういったことは歴史に学ぶのが一番だ。サブプライム後の金融の世界で起こったことに興味があるなら、現在筆者が所属するゼミの教材である『日銀 金融市場レポート』に平易にまとめられているので読んでいただきたい。ゼミの学生に聞くとややハードルが高いようだが、専門用語さえ覚えれば、そこまで難しい話が書いてあるわけではない。

 こういった各種レポートで現在の立ち位置を確認しつつ、マクロ指標やニュース、株価や債券の価格を追っていくことが肝要だろう。筆者もまだまだ学ぶべき事が多い分野だ。

ミクロ要因の参考書籍

 財務諸表の読み方については、『グロービスMBAアカウンティング』(グロービス経営大学院、ダイヤモンド社)を手本にして、勤め人ならば自社の財務諸表を、そうでなければ好きな企業の財務諸表を分析すると良いだろう。手を動かさなければ、人間何も覚えないものである。バリュエーション(企業価値評価)については『MBAバリュエーション』(森生明、日経BP社)がオススメだ。

 これら2冊はAgentsの新入生が読まされるもの。筆者も買わされたが、なかなか良い本であると思う。

需給要因の参考書籍

 テクニカル分析については、『先物市場のテクニカル分析』(ジョン・J・マーフィー、きんざい)がオススメだ。どのトレーダーもすすめており、筆者自身も心酔しているテクニカル分析入門書の決定版である。

 システムトレードやクオンツについては長くなるので別の機会にまた書くことにしよう。センチメント分析については良書が見当たらないので、これもまた機会があればご紹介したい。

金融工学の参考書籍

 金融工学は教養として知っておくと便利な学問であると思うので、入門書を紹介しておこう。どの本を読んでも同じことしか書いていないが、ここは敬愛する植田和男教授が全く何も知らないゼミ生に紹介していた『現代ファイナンス』(大村敬一、有斐閣)を推す。

 また、ヘッジファンドのトレーディング手法の概略を解説する本としては、どちらかと言えば教養書に近いが『オルタナティブ投資入門―ヘッジファンドのすべて』(山内英貴、東洋経済新報社)などもいいだろう。専門用語を振り回してはいるが平易に書いている。そういえば以前、先生とも呼べる知人にすすめられた『先物・オプション取引入門』(ジョン・C・ハル、ピアソンエデュケーション)はまだ読んでいない……、困ったな。

 教養書として有名なものに『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール、日本経済新聞出版社)などもあるが、これは功罪共に大きい本だと思う。いつか詳しく書きたいので後に譲ろう。アノマリーベースの定量的な教養書としては、以前のコラムで紹介した『行動ファイナンスの実践』もなかなか良かった。

 まあ何にせよ、株式投資……いや金融商品の価格決定、そもそも経済とはいまだによく分からない複雑系の世界である。むろん、それへの挑戦が知的な所業であることは言うまでもないだろう。

 そういえば今月下旬に出るAgents共著の書籍でも、マクロ・ミクロ・需給に分ける論法を使っていた。紙面の都合で、個人的には各分析手法の説明に大満足というわけではないのだが、発売の際にはお知らせさせていただくので、よろしくお願いしたい。

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