「自己分析」に意味がない3つの理由

» 2009年10月13日 11時36分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

1988年リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。人事専門誌・業界誌・一般誌などにも人事関連分野で多く取り上げられていただき、ラジオ番組のレギュラーを持っていたこともあります。京都大学教育学部卒。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 10月1日は、新卒の就職サイトが一斉にオープンし、就職活動シーズンがスタートする日ですが、就職活動に際して改めて思うことを、就活学生の皆さん(と大学のキャリアセンターの職員の方々)にメッセージしたい。

 いつのころからか、「就職活動は自己分析から」というのが常道になってしまいました。学生だけではなく、キャリアセンターの職員も一つ覚えのように「自己分析が大事」と繰り返しますが、これがいわゆるミスマッチや早期退社の原因の1つになっているように感じてなりません。

 私は、就活学生の皆さんに、「自己分析」なんていう大して意味のないことに力を注いだら、かえって失敗する危険性が高まるよ、と申し上げたい。理由は3つあります。

「自己分析」に意味がない3つの理由

 1つ目。

 就職活動というのは、自分で自分と会社を上手にマッチングさせるという作業です。そのためには、自分のことと、マッチングさせる対象である会社のことを知る必要があります。だから自分のことを理解するために「自己分析」が必要だということなのですが、たとえ自分のことが分かったとしても、マッチングさせる対象としての会社や仕事を間違って理解したり、よく分からなかったりしたら上手なマッチングはできません。

 会社や仕事が分かることが、学生に可能か。会社というものは、“自分”と同じように深い。会社や仕事とはそんな簡単なものではないし、だいたい会社の中にいても中々分からないのに、広告や説明会や企業研究やらで理解できるはずはありません。だから、「自己分析ができたら、間違いのない会社選びができるようになる」というのは、大間違いです。

 2つ目。

 自己分析ができたおかげで、自分に向いている会社に入ったとしましょう。でも、配属はどうなるか分かりません。どんな仕事をするかは、会社が決めることです。どんな人が上司になるかも分かりません。向いていると思った会社に入ったとしても、合わない上司につくかもしれないわけです。さらに、その会社がその後どうなっていくかも、その会社にいる人も含めて誰も分かりません。

 会社というものはどうなるか分からないし、自分が何をしていくのかも分からないし、それらは自分で決められることではない、ということを理解しなければなりません。要は、混沌とした未来から見てみれば、自己分析をベースにした選択なんてとても微力なのです。自己分析もキャリアをデザインするのも、やることは否定しませんが、ビジネスパーソンとしてのキャリアは、縁や偶然に大きく左右されることを無視してはいけないのです。

 3つ目。

 自分を進化させる、自分を変えていける人でないと、内定という目の前のことも、一人前になってキャリアを積んでいくこともできないということ。「今の自分に適した仕事を探そう」なんていうのは、それとは反対の考え方で、適職探しのために自己分析に取り組むのであれば、やればやるほどショボクなります。そんな考えの人を、企業は採用する気にはなりません。

 置かれた環境や、周囲から受ける期待に応じて、いつも自分を変えていこうとする、仕事や顧客や上司の力を借りて新しい自分を創っていく、企業はそんな気概を持つ学生を採用したくなります。自己分析の結果を鵜呑みにして、「適職なのでやってきました」では採用したくもなりません。

 就活生に言いたいのは、「自己分析よりも、もっともっと大事なことがある」ということ。それは、「どうなるか分からない将来に立ち向かう覚悟をする」こと。そして、「混沌の中でも何とかしてやるという意欲を持つ」こと。キャリアセンターも、自己分析やコミュニケーションスキルとかそんな小手先の指導はやめて、本質をしっかりと理解させることに注力すべきです。でないと、いつまでも就職実績は上がってきません。(川口雅裕)

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