早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。
「コカ・コーラ」という商品名を知らないという日本人は、赤ん坊を除いてはまずいないですよね。世界規模で見ても、コカ・コーラの「認知率」は実質100%でしょう。それにも関わらず、毎年莫大なコストをかけて広告を展開しています。なぜなのでしょうか?
もちろん、この理由を端的に言えば、商品はただ知られている(認知)だけで売れるわけではないから……ですね。商品の特徴を理解してもらい、好ましいイメージを形成し、好意を高め、購買意欲を刺激し続ける努力を続けないと、すぐに飽きられ、競合商品にシェアを奪われてしまうからです。
ただし、コカ・コーラについては、名前だけでなく、どんな色や味をしているのか、などについて誰でもよく知ってます。つまり、商品の特徴も十分に理解されているロングセラー。ですから単に「こんな製品ですから、もっと買って!」という「理解」や「説得」を目的とする「プロモーション広告」(「広告リレーション理論」に基づけば)は、もはやあまり機能しません。
むしろ、時代のトレンドやその時々の消費者の気分を的確に読み取り、「共感」を得られる広告、すなわち「コミュニケーション広告」を展開することが有効です。実際、コカ・コーラでは、上記のような「コミュニケーション広告」を主体としたマーケティング活動が行われてきています。
そして、コカ・コーラのマーケティングの基軸となる考え方が、『こころを動かすマーケティング コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』(魚谷雅彦著、ダイヤモンド社)で解説されています。魚谷氏はブランドの価値を次の2つに分けます。
(1)intrinsic value
基本的な価値。機能やスペックの価値のこと。
(2)extrinsic value
(1)に付帯的に加わる価値。エモーション、情緒や感性の価値。
そして、魚谷氏は、マーケティングにはこの両方が必要だと考えています。理屈だけではなかなか共感は生まれない。「心に届くコミュニケーションをしなければ!」という意識が極めて強いのが、コカ・コーラなのだそうです。
コカ・コーラは、「intrinsic value」(基本的価値)については100年以上変えていません。しかし、「extrinsic value」(付帯的情緒的価値)は時代に合わせて大きく変えてきたのです。
魚谷氏は「コカ・コーラは、その時代時代に応じてメッセージを変え、常に共感を獲得してきました」「自分自身の気持ちと呼応し、自分自身に訴えかけてくれる、自分をサポートしてくれていると思えるような関連性を、数年おきに、時代のあり方に合わせて変えてきたのです」と書いています。
ロングセラーを生み出す秘訣、それは、商品自体を変えることではなく、ターゲットに届ける「メッセージ」を時代に合わせて変えていくことなんですね。(松尾順)
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