取材現場では何が起きているのか? 新聞記者と雑誌記者に違い(5)上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(3/3 ページ)

» 2009年11月30日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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上杉 破っちゃいけないという規則に対して、記者は忠誠を誓いますよね。しかし「なぜこの規則はあるの?」とか「なぜ規則を破っちゃいけないの?」ということを考えようとしない。

土肥 記者クラブの中にいると、疑問に感じず、いわば洗脳されてしまうということですか?

上杉 記者クラブの中に5年以上もいると、もうダメになりますよ。

窪田 また日本の新聞社の場合、新卒で記者となり、そのまま記者クラブに放りこまれるケースが多い。なので記者クラブから放り出されて、「はい、自由に取材してください」と言われても、なかなかできない人が多いのではないでしょうか。

上杉 朝日新聞やNHKなどで記者を10年ほどやっていた人が、雑誌記者に転職したら、まったく使えないことが多い。例えば「広報が閉まっていたので、取材ができませんでした」といったことを平気で言いますから。そうした場合、広報を飛ばして、取材するのが記者の仕事なのに。

 記者クラブにいる人たちを同業者と思うと腹が立つので、昔は「広報マン」だと思っていたんですよ。しかしそれも段々腹が立ってきたので、最近では「役人なんだ」と思っています。

窪田 ハハハ。

上杉 彼らのことを「役人」と思えば、きついことを言っても「ゴメンね。きついことを言って」といった感じで、心穏やかでいられる(笑)。

窪田 記者クラブに遅くまで詰めていても、「ご苦労さまです」と声をかけられるかも(笑)。

 第6回へ続く

上杉隆(うえすぎ・たかし)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。

官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。


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