「今スタートさせないと、10年後の成功はない」――日経が有料電子新聞に挑む理由ほぼ全文(3/3 ページ)

» 2010年02月24日 21時15分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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読者の属性に合わせた広告も

――NIKKEI NETでは広告収入が落ち込んでいると思うのですが、電子版では新たな広告戦略などを考えられていますか?

岡田 NIKKEI NETはこれまで無料でやってきていて、広告収入を基盤にしていますが、ご指摘があったように広告収入は伸び悩んでいます。昨年は厳しい状況にありましたが、私たちはこの電子版を発刊することによって広告収入も伸びていくと考えています。

 それはただ景気の回復ということだけではなくて、電子版では読者登録していただいて、読者の属性を一応私たちは把握できるという形になります。「どういう読者がどの記事を読んでおられるか、どんな広告にアクセスされているか」といったことが把握できるので、そういったことを活用した新しいネット広告ビジネスも展開できると考えています。目下の情勢は厳しいですが、これから先、こういった分野を伸ばしていかないといけないと思っていて、また伸ばしていけるのではないかとも考えています。

――これまでの日本のメディアのWebサイトは基本的にアクセス至上主義だったと思うのですが、今回の電子版によってアクセス至上主義から収益至上主義に転換が図られると考えていいのでしょうか?

岡田 アクセス至上主義という考え方は私もちょっと今すぐには理解できないのですが、やはりネット上のサイトはビジターが来ないようなものでは基本的には成り立たないのではないかと思います。従って、ビジターが増えるような仕掛けをしていくために、いろんな工夫を凝らしているつもりです。

 ただ、我々がターゲットにしたいと思っているのは、無料登録会員、あるいは有料会員になっていただくような方々です。こういった方々をたくさん集めれば集めるほど、そういった方々の好みや行動パターンが分かって、紙面やビジネスにも生かせるということで、そこを増やしていけるような仕掛けも同時にやっていきたいと考えています。

――日経テレコンなどとの連動に関してシミュレーションされていると思うのですが、その中で明らかになったメリットや今後の改善点を教えてください。また、2〜3年後にイメージされているサービスの拡充などについてもお聞かせください。

岡田 日経テレコンとは連動していて、有料会員であれば月に25本までは無料で記事検索をすることができます。それ以上になると従量課金ということで、電子版の料金にプラスアルファでお支払いしていただくことになるのですが、月25本というのが適切なのかどうかとか、従量課金の仕方とか、このやり方がどのくらいうまくいくのかといったことも見極めていきたいと思っています。人によって使う量もかなり変わってくると思いますので。

 そういったサービスについては、スタートしてから利用者からさまざまな意見や不満の声などもあるかもしれないので、それを踏まえて改善していきたいです。電子版は常に改良を重ねていく商品だと思っていて、3月23日に出すものが完成品で、これから全然何もしないんだということではまったくないので、改善点があればその都度改善してサービスを付加していくものだと考えています。

 サービスの拡充についてですが、今言ったように、コンテンツについても、必要なものや魅力的なものがあればどんどん追加していきます。そういったものの中で特に付加価値の高いものは、場合によってはオプションのような形で別途料金をいただくことも考えていきたいと思っています。

日経テレコン

オープン戦略

――同業他社に対してオープンに……というお話をされたと思いますが、具体的にどういったことを想定されておっしゃったのでしょうか?

喜多 我々は電子版を開発している時に、課金システムや購読者を管理するシステムで結構苦労したところがありました。そこで、もしこれからお始めになる同業の方々の中に、我々の作り上げた課金システムや購読者の管理システムを使いたいという方がいらっしゃったら、それをどうぞお使いくださいということです。もちろん、そのままでは使えませんが、少し工夫すれば多分使えるような仕組みにしてあります。

――iPhoneなどのスマートフォンに対して、何らかの戦略は持っていますか?

岡田 iPhoneでは今でもWebをご覧になれるので、電子版は十分利用できます。ですから、Webが見られる端末であれば、自由に電子版はご覧いただけますし、そこを通じてログインしていただいて、有料記事をご覧いただくということも可能です。

 ただ、それ以外にも今、新しい形での端末がたくさん開発されつつあり、先ほど社長があいさつでも触れましたようにいろんな提案や打診のようなものが、我々の方にもなされるようになっています。ただ、各社それぞれに仕様が違ったり、考え方が違ったりしていて、私たちの考えとぴったり適合するものがあるのか、私たちのビジネスモデルと矛盾なく展開できるようなサービスなのかというところを今研究している段階です。ただ、そういったものへのニーズが非常に伸びてきていることは事実なので、我々としてもそういった分野にはオープンに対応していくということで今いろいろ作業を進めているところです。

――電子版の専用携帯端末のようなものを出されるお考えはありますか。

岡田 日経自身が専門端末を出すことは考えていません。電子版が非常に見やすいような端末を開発していただいて、販売していただけるということであれば我々としても乗っていきたいと思いますが、自分で作って自分で売るということは現時点ではまったく考えていません。

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