先週最も読まれた記事は「新型BMW『M5』、迫力のボディ」。2位は「どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る」、3位は「なぜ中国人は『ごめんなさい』と頭を下げないのか」だった。
折からの労働状況の悪化からか、8月から始まった人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんの対談シリーズ「低年収時代よ、こんにちは」がよく読まれているようだ。その最初の記事に載っている日本人の平均年収推移を示したグラフ(下図)は衝撃的だろう。1997年の467万円を頂点として、完全に右肩下がりになっているのである。
これを見て、「新興国の台頭で、世界の中での日本の存在感も失われてきてるからな。仕方ないか」と思う人もいるかもしれない。しかし、実はグローバルな視点で見ると、様子が変わってくる。なぜなら円の価値が近年の為替変動によって、大きく上がっているからだ。
そこで国際通貨と言われるドル(最近はその威信にも衰えがあるが)で日本人の平均年収を表したのが次の表である。為替レートは各年四半期末の終値の平均で計算している(2011年は3月末と6月末の平均)。
西暦 | 平均年収(万円) | ドル円レート | 平均年収(ドル) |
---|---|---|---|
1995 | 457 | 94.33 | 48447 |
1996 | 461 | 111.03 | 41520 |
1997 | 467 | 122.35 | 38169 |
1998 | 465 | 130.36 | 35670 |
1999 | 461 | 112.49 | 40981 |
2000 | 461 | 107.76 | 42780 |
2001 | 454 | 125.51 | 36172 |
2002 | 448 | 123.19 | 36367 |
2003 | 444 | 114.13 | 38903 |
2004 | 439 | 106.38 | 41267 |
2005 | 437 | 112.3 | 38914 |
2006 | 435 | 117.32 | 37078 |
2007 | 437 | 116.86 | 37395 |
2008 | 430 | 100.66 | 42718 |
2009 | 406 | 94.45 | 42986 |
2010 | ? | 86.61 | ? |
2011 | ? | 81.85 | ? |
いかがだろうか。少し驚きではないだろうか。ドルで見ると、2009年の平均年収は4万2986ドルで1996年以降で最も高くなっているのだ。そして、円で見た時は1995年以降で2番目に高かった1998年の平均年収は、逆に最も低くなっている。
2010年以降の平均年収の統計はまだ出ていないのだが(厚生労働省の毎月勤労統計調査を見るとやや増えている印象がある)、仮に2011年の平均年収が2009年と同じ406万円だとすると、1ドル=81.85円でドル換算すると4万9603ドル。1995年の値も超えることになる。そう、あまり実感しにくいかもしれないが、日本人の平均年収は空前の高水準にあるのである。「そういえば給料は上がってないけど、輸入品が安くなって買えるものは増えてるなあ」と思い当たる人も多いのではないだろうか。
年収300万円という言葉が2003年度の流行語大賞に選ばれたが、8月10日の終値の1ドル=76.8円でドルに換算すると3万9065ドル。ここ10年では平均的な値である。
ただ、トヨタ自動車やソニーなど、グローバルに展開する企業の立場からすると、恐らくこの点は非常に問題だと思っているだろう。「もう日本で事業はできない? 企業の半数が円高での産業空洞化を懸念」で、企業の海外流出が加速する懸念要因として「人件費が高いから」と答えた企業が4割弱にのぼったこともうなづける。もちろん中国などの新興国ではもっと平均年収は急増しているだろうが、先進国では異例の伸びだろう。
ドル円レートが1ドル=76.25円の史上最高値を突破しようかとしている昨今。通貨の強さを上回るだけの強みを日本人が発揮できるかが問われているのかもしれない。
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