2000年以降、「資質を問われて」辞める閣僚が急増している誠 Weekly Access Top10(2011年9月3日〜9月9日)

» 2011年09月16日 11時00分 公開
[堀内彰宏Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は「レッドブルが売れているワケ」。2位は「マクドナルドの店舗が、大型化しているワケ」、3位は「彼女・奥さんと同じベッドで寝ていますか?」だった。

 「『この国の持てる力の全てを結集しようではありませんか』――野田首相所信表明演説全文」にあるように、9月13日に所信表明演説を行い、本格的な活動を始めた野田佳彦内閣。先週のトップ10では首相が直接発信する場がないと書いたのだが、9月12日からブログ「官邸かわら版」が始まり、今後積極的に更新していくようだ。

 就任直後の世論調査では、高い支持率を得ていた野田内閣。しかし、所信表明演説の中でも野田氏が触れたように、経済産業大臣だった鉢呂吉雄氏が放射能に関して不適切な発言をしたとして、就任早々辞任することとなってしまった。

 先日も松本龍防災担当大臣が発言が問題となって、就任早々に辞めることになったので既視感のある展開である。こういうことは最近の傾向なのかなと思ったので、2000年以降に辞任・罷免された閣僚について首相官邸Webサイトを参考にして調べたのが、以下の表である。

任期途中で辞任・罷免された閣僚

辞任者 辞任日 在職日数 内閣 役職
越智通雄 2000年2月25日 143 小渕・二次改造 金融再生委員会委員長
久世公堯 2000年7月30日 26 第二次森 金融再生委員会委員長
中川秀直 2000年10月27日 115 第二次森 内閣官房長官
額賀福志郎 2001年1月23日 17 第二次森改造(省庁再編後) 経済財政政策担当大臣
田中真紀子 2002年1月30日 289 第一次小泉 外務大臣
大島理森 2003年4月1日 193 第一次小泉・一次改造 農水大臣
福田康夫 2004年5月7日 170 第二次小泉 内閣官房長官
島村宜伸 2005年8月8日 318 第二次小泉・改造 農水大臣
佐田玄一郎 2006年12月28日 93 安倍 行政改革担当大臣
松岡利勝 2007年6月1日 248 安倍 農水大臣
久間章生 2007年7月4日 281 安倍 防衛大臣
赤城徳彦 2007年8月1日 309 安倍 農水大臣
遠藤武彦 2007年9月3日 8 安倍・改造 農水大臣
太田誠一 2008年9月19日 48 福田・改造 農水大臣
中山成彬 2008年9月28日 4 麻生 国土交通大臣
中川昭一 2009年2月17日 146 麻生 財務大臣
鳩山邦夫 2009年6月12日 261 麻生 総務大臣
藤井裕久 2010年1月7日 113 鳩山 財務大臣
福島瑞穂 2010年5月28日 254 鳩山 消費者担当大臣
亀井静香 2010年6月11日 3 金融・郵政改革担当大臣
柳田稔 2010年11月22日 66 菅・改造 法務大臣
前原誠司 2011年3月7日 52 菅・二次改造 外務大臣
松本龍 2011年7月5日 8 菅・二次改造 防災担当大臣
鉢呂吉雄 2011年9月11日 9 野田 経済産業大臣

 辞任した閣僚は2000年以降の12年弱で24人。約半年に1人辞めている計算である。そして、24人のうち、今回のように不祥事や問題発言など閣僚としての資質を問われて辞めたケースは、17ケースである(松岡利勝氏も不祥事が追及される中で自殺したので、その中に入るかもしれない)。

 takerunba氏も戦後の閣僚辞任について調べているのだが、それと合わせてみると興味深いことが分かる。辞任閣僚数は戦後66年で112人と2000年以降のペースと大きくは変わらないのだが、資質を問われて辞めたケースは1940年代(実質4年半)が3ケース、1950年代が1ケース、1960年代が2ケース、1970年代が4ケース、1980年代が8ケース、1990年代が8ケースと最近になるほど増加しているのだ。政治家に求められる資質のレベルやメディアの報道の変化などが背景にあるのだろうが、少し考えさせられる結果である。

辞任・罷免理由など

辞任者 初入閣 理由
越智通雄 × 金融関係者への講演での発言が「手心発言」として辞任
久世公堯 三菱信託銀行から多額の利益供与を受けていた問題で辞任
中川秀直 × 右翼幹部との交際疑惑や愛人問題から辞任
額賀福志郎 × KSDから資金提供を受けていたことで辞任
田中真紀子 × アフガニスタン復興支援国際会議でNGOを排除した問題で更迭
大島理森 × 政策秘書が公共工事などに絡み口利き料を得ていたとの疑惑から辞任
福田康夫 × 国民年金保険料の未納問題から辞任
島村宜伸 × 郵政解散に反対して辞表を出したが、罷免
佐田玄一郎 政治団体の政治資金収支報告書をめぐり「不適切な会計処理があった」として辞任
松岡利勝 事務所費問題で批判を受ける中、議員宿舎で首つり自殺
久間章生 × 米国による広島、長崎への原爆投下を「しょうがない」と発言したことで辞任
赤城徳彦 政治団体の事務所費をめぐる問題が参院選惨敗に影響した責任を取り辞任
遠藤武彦 組合長を務める農業共済組合の補助金不正受給の責任を取り辞任
太田誠一 × 汚染米の不正転売問題に関する農水省の検査体制の不備や自らの発言の責任を取り辞任
中山成彬 × 成田空港拡張が進まなかった原因を「(地元住民の)ごね得」とした発言などの責任を取り辞任
中川昭一 × G7後にろれつが回らない状態で記者会見した問題の責任を取って辞任
鳩山邦夫 × 日本郵政社長人事を巡る混乱の責任をとり辞任
藤井裕久 × 体調不良を理由に辞任
福島瑞穂 普天間飛行場の移設問題で政府方針に反発し辞任
亀井静香 × 郵政改革法案の成立を実現できなかった責任を取り辞任
柳田稔 「法相は(国会答弁で)2つ覚えておけばいい」と国会軽視の発言をしたことで辞任
前原誠司 × 在日韓国人からの献金問題で辞任
松本龍 × 被災県訪問の際「知恵を出さない奴は助けない」などと発言した問題で辞任
鉢呂吉雄 「放射能を付けたぞ」「死の町」といった発言の責任をとり辞任

 ちなみに今回の鉢呂氏のように就任から100日以内に資質を問われて早期辞任したのは、2000年以降では10ケース。そのうち額賀福志郎氏や前原誠司氏は内閣改造前から閣僚だったので、実質8ケースと言える。

 気になるのはその8ケースのうち、過半数の5ケースが初閣僚ということである。初閣僚の辞任は全体では3分の1にとどまるので、目立つ立場になったことで不祥事が明るみに出たり、閣僚としての振る舞いが問われやすくなったりした結果、早期辞任に追い込まれる傾向にあることがうかがえる。

 読者のみなさんも人生で1度くらいは閣僚になる機会があるかもしれないが、初めて任命された時にはメディアに叩かれないよう、特に最初の3カ月は言動などに気を付けるよう肝に銘じていただきたいと思う。

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