スマートテレビとは何か?遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/3 ページ)

» 2012年06月12日 13時33分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]
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テレビがやるべきこととは?

 しかし、わたしは、テレビには固有の価値があり続けるべきだと思っている。テレビのような、強力で、大衆的で、同時性の強いメディアは、これからも必要だと思っている。映像コンテンツが作られ、人々の生き方や価値観を変え、広告や消費に対するメッセージが経済を活性化する。メディア全体のバランスは変化し続けるだろうが、相応の大きな価値がテレビに与え続けられるべきだと思っている。

 そのためにテレビがやるべきことは何かといえば、「チャンネル」という発明に匹敵する新しいアイデアではないかと私は思う。「テレビ番組表」や「視聴率ランキング」や「広告枠」は、そのブレイクダウンだ。誰にでもわかる単純化されたルールの上でゲームが行われていることが重要なのだ。その枠組みが見えるから、製作者も頑張れるし、スポンサーも広告を出せるし、視聴者もドッシリと座って見ることができる。

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 それに加えて必要となるのは、アプリの流通(ストア)や課金のしくみ、広告の配信システムを含めたモダンなプラットフォームだろう。iOSやAndroidでは、すでにそのあたりが整備されている。スマートテレビでは、「HTML5」というアプリの動作環境やソーシャルテレビ機能が注目されることが多い。しかし、これらが揃ってはじめてスマートなデバイスとなるはずである。

韓国のスマートテレビ事情

 スマートテレビが、すでに派手に売られはじめているのが韓国だ。今週、韓国のITジャーナリストの趙 章恩さんにお会いした際に、その様子を聞いた。彼女と知り合ったのは2000年頃だが、当時、韓国ではすでにテレビ番組のネット配信が行われていた。それから10年以上が経過し、いまの韓国のテレビ事情はどうなのかと聞くと、サムスンのスマートテレビが、価格が高いにもかかわらず相応に売れているそうだ。

 そのスマートテレビで、韓国の人たちは何をやっているのを聞くと、まずは番組アプリでテレビ番組を見ている。それから、Wii Fitのようなヘルス系やダンスゲームのアプリを楽しんでいる(ジェスチャーで操作できるもの)。あるいは、英語の勉強なんかもやっている。「ネットは使わないんですか?」と聞いたら、画面を分割してテレビ電話をしながら使ったりするそうだ。

 こんなふうに聞くと、いままでのテレビと同じで、大衆的で、簡単で、気取らないものだと思えてくる。スマートテレビという、定義もままならない誰も使ったことのないシステムではなく、いままで外部接続されていた家庭用ゲーム機を、テレビに入れちゃったほうがわかりやすいような気さえする(図3の法則のとおりだ)。シャープのファミコンテレビ「C1」やスーファミテレビ「SF1」があったのだから、Wiiの入った「NW1」というテレビが出てもいいわけだ。

 スマートテレビとは、リビングにある大型の画面で、どんなことができるかというだけのことなのだ。アプリやソーシャルでちょっと便利になるくらいでよくて、いまとそれほど変わらないテレビがいいという人が、少なくないかもしれない。

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