原発報道、なぜ詳しい人が書かなかったのかさっぱり分からなかった、3.11報道(5)(3/4 ページ)

» 2012年08月01日 08時02分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

烏賀陽:朝日新聞の元記者で原淳二郎さんという方がいます。彼は現在、67歳。何と東京大学工学部原子力工学を卒業している。しかも朝日に入ってからは福井支局〜大阪経済部で電力担当だった。原発のことを本当によく知っている。

 取材にかり出されているかもと思って、原さんに電話をしてみたら、都内の家にいた(笑)。テレビを見てイライラしている。で、私がいろいろ話を聞いて書かせてもらいました。ものすごくもったいないですよ。原さんを現場に投入したら、ものすごい記事を書くはず。そんな人材はたくさんいます。ところが死蔵されている。なぜならば朝日新聞社の定年は60歳だから。ただそれだけのこと。

相場:どこの新聞社でもよく聞く話ですね。

烏賀陽:会社組織がジャーナリズムをやる……ということに限界があるのかもしれません。いろいろな制約が多すぎて、原さんのような人に書いてもらうことすらできなかったのですから。

 3.11という非常事態の中で、政治部、社会部、経済部といった部の枠を壊して、チームを編成した新聞社はあるのでしょうか?

相場:聞いたことがありませんね。例えば東電の記者会見に、大御所の記者がどーんと座っていたら、それだけで会見が引き締まるのに。

社内の対立構造は「人畜有害」

烏賀陽:東京の○○部と大阪の○○部というのは、仲が悪いことが多いんですよ。例えば、政府はなぜSPEEDIの情報をすぐに公表しなかったんだ? ということが問題になりましたが、実は朝日新聞社の大阪科学部がこの話を最初に書いた。

 なぜ大阪で書けたかというと、大阪府庁にもSPEEDIがあるから。それを取材して、原稿を東京に送った。しかし、1週間くらい紙面に載らなかった。その間に他社が書いてしまって、大阪の科学部はカンカン(笑)。東京の科学部がなぜボツにしたかというと、1つは文部科学省の担当が「文科省はSPEEDIのデータは不正確だと言っている」と言って掲載に反対した。

相場:東京の科学部に、文科省の肩を持っている記者がいたってことですね(笑)。

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