子どものためのつもりが、逆にプレッシャーをかけてませんか――お母さんのための就活講座サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)

» 2012年12月10日 08時30分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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就活生にとって、理想のお母さんとは「駆け込み寺」である

 三番目はコミュニケーションスタイルについてです。会話している時のようすをちょっと思い浮かべてください。「今日、学校で何があったの?」「終わってからどんなことをしていたの?」「で、就活はどういう状態なの?」「今、どんな企業を受けているの?」と質問ばかりしていませんか。子どもを質問攻めしているようだと、残念ながら親子のコミュニケーションとが良好とはいえません。文字にしてみると一目瞭然ですが、子どもの立場に立った場合、こんな風に「聞かれてばかり」の相手にうまく心を開くことは難しいでしょう。

 特に、就活が上手くいっていないナイーブな時期にこういうコミュニケーションを取られたら、子どもは耐えられないかもしれない。そう考えると、今の時期から「質問ばかりする」コミュニケーションスタイルから「相手が口を開くまで我慢する」という形にモデルチェンジしておくことをお勧めします。なぜなら、子どもにとって母親は「駆け込み寺」のようなものだから。愚痴をこぼしたり、辛いと告白したり、ただ聞いて欲しいときに黙って耳を傾けてくれる、そんな存在であることを母親に期待しているのです。しかし毎回、自分の経験からトンチンカンな提案をしたり、質問攻めにして、言いたくないことを聞き出そうとしたりされると、子どもとしては「行き場がなくなってしまう」のですね。それはできる限り避けておきたい。

 四番目の「子どもの友達の進路状況の詳細情報を持っている」も同様です。どうしても、周囲の子どもと自分の子どもを比較してしまう。知っているからこそ、それを子どもにも伝えてしまうのです。子どもの奮起を促す意味で「隣の綾乃ちゃん(仮名)は、メディア関係の企業にお勤めが決まったそうよ」と、情報だけ伝えたつもりでも、受け手である子どもは言外にある「で、あなたはどうなの」という言葉を感じ取って、プレッシャーになってしまうのです。

 最後の「自分の子どもに苦労はさせたくないと思っている」は、価値観の押しつけはマイナスであることを理解する必要があるという話です。自分がやりたいことをやればいいよ、と言い続けてきたくせに、いざ就職先を見つけてきたら「聞いたことがない企業だけど大丈夫なの?」「もっと大きな企業には行けないの?」「安定が第一だから公務員を受けなさい」と、子どもが選択したことを一切尊重しない発言をしてしまう。反論しようものなら「お母さんは、あなたが将来苦労しないようにと思って、言っているの」と伝家の宝刀を抜くという事態になってしまいます。それがいかに良くない状況なのか、ここまで読めば分かると思うのです。

 特に、自らが就活を経験し、それなりに働いた経験があると自負しているお母さんは、就活生に無駄なプレッシャーをかけがちです。確かに社会人としての先輩なのですが、就活生にとってはそれ以前に「お母さん」なのです。自宅に帰ってまで「社会人」と接する必要はないと考えて、自分にしかできない役割を果たしてあげて欲しいと、切に願います。……といいつつ、この原稿を読んでいる就活生の母親がどの程度いるのか、かなり不安なのですけどね。

 →子どもが就職できるか心配――そんな「お父さんのための就活講座」

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