――帝国化する企業に弱点はないのですか?
小飼:帝国の一番の敵は、やはり帝国なんですよ。帝国同士の戦いはハタから見ていると面白いですよね。アップルみたいに、左前だったのが左うちわになる例があるかと思えば、逆に左うちわだったのが左前になってて、いつのまにか買われて別会社になってたみたいな話もある。
松井:そう、いまは戦国時代みたいなもので、どっちが勝つか分からないんです。
小飼:エクソンモービルはトップの石油会社ですが、飛び抜けて全世界の石油を支配してるかっていうとそんなこともなくて、トップなのに8%くらいしかシェアがない。ライバルがいっぱいいるんですよ。
松井:国営の石油会社など、国がいっぱい資本をつぎ込んでいるから、とても規模が大きいんです。例えば中国なんかは人口が多く、エネルギーに対する危機感が強い。だからエクソンモービルが入札するところには必ず入ってきて、似たようなことをやっています。
小飼:さらに、帝国が悪いことやったら看過されるかというと、そうでもない。一番いい例は、2010年に起きたメキシコ湾でのBPの事故。
松井:史上最悪の原油流出事故と言われてますね。
小飼:こうした事故に比べると、東京電力はかなり生温いですよね。事故の規模からいったらどちらも人類の歴史に残る災厄というのは間違いない。
帝国といってもその程度の壊れやすい状態なんです。iPhoneのアンテナが立たないだけで株主代表訴訟が起きてしまう。「帝国」と聞くと、スターウォーズに出てくるような組織を思い起こすかもしれませんが、拍子抜けするほど壊れやすい
松井:アンテナ問題は象徴的ですね。帝国と言っても、世論には迎合せざるを得ない。「ほかの帝国の製品を使われたら困る」とかね。アップルも、イメージが第一みたいなところがあって、中国で「あこぎない搾取をしているんじゃないか」と言われたとたんに慌てるとか、そのあたりが意外に切ない感じはしますね。
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