「キャリアアップ」のために会社を辞める若手社員の本音とはサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)

» 2013年07月08日 04時45分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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 次の表「仕事をする上で大切だと思うもの」を見てみましょう。

仕事をする上で大切だと思うもの(クリックすると全体を表示。出典:リクルートワークス研究所)

 見事に、日本以外の国では「高い賃金・充実した福利厚生」が1番です。国の発展の度合いによって、2番目に大切にする項目が「明確なキャリアパス」であったり「適切な勤務時間・休日」であったり「雇用の安定性」のようですが、日本は他国がトップ2に挙げている項目のスコアよりも「良好な職場の人間関係」と「自分の希望する仕事内容」をトップ2に挙げています。高い賃金という項目は他の国の半分くらいのスコアになってしまっています。

 ちなみに、米国・ブラジル・ドイツ・ロシア・オーストラリアでも「高い賃金・充実した福利厚生」がトップになっていて、日本の若手社会人だけが「働くのは金だけじゃない」という傾向を表してしまった結果になっているのです(サンプル数がそれほど大きくないので、「実証した」とまではいえないですが)。

結論は「日本は豊かだから」なのか?

 この結果を見て「日本は豊かなのだな」と思う人は多いと思います。ただ、人事担当者たちは焦るべきなのかもしれません。冒頭に書いた通り、「キャリアアップしたい」といって退職する人たちが多いと言われているのに、このデータを見ると「明確なキャリアパス」が仕事をする上で大切である、と挙げている人は他の項目に比べて多くありません。実際は「自分の希望する仕事内容」も仕事をする上で大切だと思っている人たちが「仕事内容などに不満」があって辞めてしまっていることが見て取れます。キャリアアップという言葉の裏に隠された、ホンネの部分を見落としてはならないようです。

 転職したいという人たちの相談に乗り、辛抱強く話を聞いていると、結局は「何が何でもそこから離れたい」という本音にたどり着きます。現状に不満があるから場所を変えたい、という感じでしょうか。ただこれは、どうしても「我慢が足りない人」だと思われがちです。しかし「良好な職場の人間関係」を、働く上でもっとも大事にする日本の若手社会人は、職場であつれきを起こしてまで改善を求めるよりは、自分のやりたい仕事内容を提供してくれる、今の自分と「合いそうな」企業に、キャリアアップなる言葉で真意をオブラートに包んで、そっと移っているのかもしれません。

 「なぜそうなってしまうのか」というほどではありませんが、逆の視点から見た調査データから、興味深い現象を発見しました。が、それは次週に。

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