今、企業が保有している手元現金は200兆円を超えると言われています。このお金を市場に流しやすくすることで、消費増税後の消費の減速を抑えようというのが政府の狙いです。
交際費の損金算入拡大は確実に消費を活性化するでしょうから、すごくいいことのように見えます。では、どんどん枠を広げて交際費をどこまでも使わせればいいかというと、それは違うと思います。やはり制限は必要でしょう。
もし、交際費への課税を止めたとすると、誰もが好きにお金を使うでしょう。何に使ったか分からないような領収書があふれかえるでしょう。
それで飲食業界は潤うかもしれませんが、不正やごまかしが横行して社会のモラルは下がってしまうかもしれません。贈収賄の温床にもなるでしょう。
税収も減ります。なんでもかんでも交際費にして落としてしまうでしょうから、ただでさえ少ない法人税はさらに激減するでしょう。さらに所得税までも減るかもしれません。給与や報酬でもらうと所得税がかかりますが、接待や贈答など交際費の形にすれば所得税もごまかせます。お互いに接待し合えば、所得をごまかし合ったりすることもできます。
交際費は使った側が課税されるという珍しい形式です。
普通に考えれば、接待や贈答品を受け取った側、利得を得た方が課税されるべきです。大企業のエライさんともなれば年間数十万、数百万相当の接待や贈答を受ける人もいるかもしれませんね。ではそういう人にいちいち申告させて課税するか、というとそれは無理があります。
接待するたびに「部長、申告しておいてくださいね」なんて言えません。それでは接待をする側も、受ける側も大変です。
だから、後で払った側に対して一定額を超えた交際費をまとめて課税対象にしているわけです。そのほうが接待する側にもされる側にも、また課税当局にとっても合理的だからです。だから原則的に交際費は損金として認めないわけです。そのようにしてみんなで折り合いをつけているのが交際費というものなのです。
今回の大企業への交際費損金枠拡大は明らかに消費増税対策です。
消費増税後の消費の落ち込みを少しでも抑えて、収益力の弱い飲食業や小売業、サービス業などを下支えするための施策ですね。
だから一時的な措置と言えます。上限金額の制限を設けて、かつ2015年までの時限立法になるでしょう。飲食業界、サービス業界には朗報かもしれませんが、ずっと続くことはないでしょう。
これが恒久制度化されて、社長においしいところに連れて行ってもらえるなら個人的には嬉しいですけど……、そこまで期待はできませんね。(川瀬太志)
※この記事は、誠ブログの世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる:「83.7%が赤字の飲食業に朗報!? 交際費が変わる?」 〜交際費とはなにか?〜より転載、編集しています。
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