市販ペットボトル飲料水のうち、約半数は「ただ」の水道水伊吹太歩の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年03月20日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。


 先日、打ち合わせのために東京の六本木に向かっていたときのこと。時間に余裕があったので、渋谷から都営バスを利用することにした。すると、車内前方のテレビ画面から東京都水道局の広報映像が流れてきた。高校の理科室と思われる場所で、若い男性教師と女子高生が会話をするアニメだ。

女生徒: 先生、今日の授業で水道水は安全だって言いましたよねぇ?

教師: 言ったよ。

 すると怒った様子の女生徒は拳を握ってこう聞く。

女生徒: じゃあ、値段の高いミネラルウオーターと比べたらどうなんですか!?

 と、こんな調子で2人の会話は30秒にわたり続く。そこで、東京都水道局のWebサイトを見てみると、水道局は大々的にミネラルウオーター(地下からくみ上げた水)ではなく安全で安い水道水を飲もう、というキャンペーンを行っている。

 確かに東京の水道水は世界的に見ても、最も安全な水であると言われる。にもかかわらず人々がわざわざお金を払って、ペットボトル入りの水を買うことが納得いかないのか、自分たちの仕事を認めてもらいたいのか分からないが、Webサイト内に何パターンもの広報映像がある。

 さらには水道水とミネラルウオーターを飲み比べするキャンペーンも行っており、「約2万9000人のうち、『水道水がおいしい』と答えた方が50%(2012年度は約1万4000人中45%)」と宣伝している。

 ボトルウオーター(bottled water、特にペットボトル入りの水)を購入するのはカネの無駄か――この議論は実は日本だけでなく、海外の先進国でも賛否が分かれている。ネット上でもさまざまな団体がボトルウオーターの“不都合な真実”をいろいろな形で喧伝しており、世界で最もペットボトル飲料水を消費している米国では、ミネラルウオーターをめぐって訴訟問題に発展したほどだ。

photo 東京都水道局がバスや電車内で展開している広報映像
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