もちろん、メーカーの生命線である水源などを、ほぼすべてのメーカーが明らかにしない理屈は理解できる。ただ米消費者団体「フード&ウオーターウォッチ」は、ボトルウオーターについて正しい知識を得るべきだと主張している。
同団体の調査では、現在市場に出回るボトルウオーターのうち、約半分は水道水だという。例えば、米国でよく目にするアクアフィーナ(Aquafina)やダサーニ(Dasani)といった人気のボトルウオーターは、水道水をフィルターに通しただけに近い製品だ。こうしたペットボトルで売られる“水”は、自宅で蛇口をひねれば出てくる、非常に安価な水とさして代わらない。それを、元は水道水であることを言わずに、何千倍もの価格で販売していることになる。
こうした指摘は米国に限ったことではない。英国でも2012年夏に、スーパーマーケットに並ぶ格安のボトルウオーターが、実は水道水をフィルターに通しただけのものだったとして物議を醸した。
ニューヨーク市は2007年に、世界でも最も安全な水道水を提供する都市の1つであるとして、もっと水道水を飲むよう促す大々的なキャンペーンを行った。ボトルウオーターは環境に負担をかける上に、水道水に比べて格段に高いからだ。さらにニューヨークの水は汚い、というイメージの払拭も目的にしていた。
もしかしたら、東京都水道局はニューヨークのそんなキャンペーンを参考にしたのかもしれない。六本木ヒルズ行きバスの広報映像では、先生が水道水とミネラルウオーターの安全性について説明をする。先生は「水道水の基準項目が50項目以上であるのに対して、ミネラルウオーターは18項目だけしかない」と話す。
どうやら、基準の厳しい水道水のほうが安全だということを言いたいらしい。すると女子学生は水道水を飲みながらこんなオチを言う。
「安くて安全なんて、水道水ズルい」
だが、本当にズルいのは水道水であることを内緒にしているボトルウォーターのメーカーだろう。
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