日本語は「ん」や「っ」や「音引き」は音として数えたり数えなかったりする。だから、読み手は自然に7音や5音に関連づけて覚えるわけだ。「新函館」は「しんはこだて」。6音だけど「しん」を1音で捉えられるから5音となり、このほうが呼びやすい。「函館北斗」なら「はこだてほくと」で7音。よいリズムと思う。しかし「新」を付けた「しんはこだてほくと」は9音。これは読みにくい。「しん」を1音にしても8音。どうにもならない。
和歌や俳句、都々逸(どどいつ)は7音5音でできている。記事や小説などの散文も同様だ。7音5音のリズムを意識して単語と助詞を選び、読点を打つと読みやすくなる。ただし、文章をすべて7音5音にするとクドいし、かえって平板な文章になってしまう。ここぞという場所で3音+3音+3音のようにリズムに変化を与えると、読者はそこで引っかかり、その部分の印象を強めてもらう効果がある。これは私が工学院大学の「テキスト商品学」という講義で教えているテクニックの1つだ。
「新函館北斗駅」を反面教師として、読者諸兄が文章、キャッチコピー、商品やサービス名を考える時の参考としていただければ幸いである。
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