え? もう新車?──JR東日本が急ぐ、「新・山手線」投入のワケ杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2014年07月11日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

「丈夫で長持ち」から「リサイクル」へ

 JR東日本の新車投入サイクルが短くなっている。その理由は最新の技術をいち早く取り入れるためだ。それが明確になった車両は、先代の京浜東北線向け車両の209系だ(1993年)。従来の電車は「丈夫で長持ち」という方針で設計されていた。電車の減価償却期間は13年だから、耐用年数も13年を超えていればいい。しかし、減価償却が済めば利益率が上がる。だから実際には20年以上使えるように設計されていた。

photo 山手線の車両の変遷 茶色の旧型国電の終了時期は昭和38年頃らしい

 JR東日本はその習慣をやめた。新車の導入時期を早め、最新の技術をなるべく早く導入する。そのかわりにステンレス車体など、リサイクルが可能な素材をふんだんに取り入れる。スクラップ&ビルドの考え方である。

 従来の鋼鉄製の鉄道車両は20年以上使うため、その間の腐食に耐えられるよう骨組みや外板を太く厚くした。だから昔の鋼鉄製車両には重厚感があった。しかし、ステンレス製車体は腐食しにくいため、骨組みや外板は従来より細く薄くできる。したがって車体が軽くなり、走行時の軽快感が増す。もちろん軽くなれば消費電力も少なくなって省エネルギーに貢献する。

 しかし、JR東日本のコンセプト「車両の耐用年数を下げる」部分が強調され、車体の重厚感もなくなったことから、鉄道ファンから「安っぽい」「使い捨て」という批判を受けてしまった。当時流行したレンズ付きフィルムをもじって「走ルンです」などと呼ばれた。

 もっとも、現在はそんな声も収まったようだ。E231系、E233系が各路線で活躍すると、やっぱり新車のほうが気持ちがいい。車内液晶モニターなど最新設備も便利だ。

 JR東日本としても、まだ使える車両を無理やり廃車にはしない。京浜東北線を引退した209系は、室内をリフォームした上で千葉県の総武線、内房線、外房線などで使っている。埼京線や横浜線を引退した205系電車はインドネシアへ譲渡されている。先行き不明な新幹線の輸出よりも、足が地に着いたビジネスである。

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