何が変わる? iBeacon対応の「近未来レストラン」へ行ってみた新・O2Oマーケティングの期待と課題(3/3 ページ)

» 2014年08月11日 21時33分 公開
[太田百合子,Business Media 誠]
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「iBeacon」による集客システム、可能性と課題

 トリニティの星川哲視社長は「現在はまだ試験導入の段階」と前置きしながらも、「iBeacon」による集客システムの課題と可能性について、次のように語ってくれた。

photo トリニティの星川哲視社長

 「iBeacon機能で、(iOS 7以降の)iPhoneが電波の届くエリアに入れば、何かのアクションを起こす──例えばクーポンのプッシュ配布などができるようになります。その距離は最大で半径10メートルくらい。店内から、お店の前を通りがかった人の範囲までという感じです。とはいえ、事前に承認を得ないで一方的にクーポンを送りつける方法は、おそらく不快と感じることでしょう。今後Beaconを導入する店舗が増えたとき、商店街を歩くだけで大量の通知が来るとなると……いかがでしょう。

 うちの場合は立地が繁華街ではないので、たまたま店の前を歩きで通りがかるケースは比較的少ないかもしれません。それならどうするかの考え方もありますし、ともあれここは大きな課題です。まずはWebやFacebook、LINE、メールニュースといった従来の方法で、まずはお客様とのコミュニケーションの場を設けて事前に登録をしてもらった上で、近くに来たらそれを通知するという方法から、これまでとは違う新しい価値を提供するスタイルを──と思っています。

 将来的に、誰もが持っている(あるいは将来的にOSの標準機能として搭載されるような)クーポンアプリのようなものがあれば、そこに向かって配信するという方法もあるでしょう。iBeaconについては、たまたま通りかかった一見さんをクーポンで呼び込むというより、リピーターを囲い込むために使える仕組みという気がしています。一度来店していただいたお客様が、再び店の前を通ったときに気が付いてもらう使い方ですね。将来的には、スタンプをためる会員カードのように、電子的に来店回数を記録して、回数に応じた特典を提供する施策もやってみたいと思います」(星川社長)

 昨今、クーポン券や会員カードは多くの店舗で導入されているリピーターを呼び込むための施策。ただ利用者からすれば、たまにしか行かない店で入会を促されたり、そもそも財布を圧迫するのがいや、と思う人もいる。筆者は財布がパンパンになるのを嫌って会員カードは財布とは別に保管し、店へ行く日のみそれを個別に財布へ移し替える。ただ、何かのついでにたまたま足を向け、会員カードがなくて特典が受けられなかった悔しい経験はよくある。財布に入っていたとしても存在を忘れており、帰り道で悔しがることもよくある。

 スマホへ自動通知してくれる方法は、この部分をスッと解決してくれる。クーポン券や会員カードを持ち歩く手間がなく、しかもクーポンが使えることにちゃんと気付けることだけでも、顧客満足度の向上につながるはずだ。もちろんこれだけではない。リピーターをガッチリつかみ、そして新規客の呼び込みと集客に結びつけるのが重要で、模索中と星川社長は述べる。

 すでに定着したスマホ、そしてじわじわと自然に、身近になっていきそうなBeaconシステム、これをどう生かせるか。これまでなかった顧客価値の提供や、新たな販促の仕方がほかにもいろいろ思いつくかもしれない──そんな部分が「使い方次第で化ける」と言われている理由である。飲食業界ではない他業種の人も、この部分は今後、事業を成長させる大きなヒントになるはずだ。


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