渋谷―羽田アクセス線対決! 東急が「蒲蒲線」に前向きになった理由杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)

» 2014年09月12日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

東急電鉄が積極的に転じた理由

 2014年7月に大田区は「3番目のプラン」を検討していると報じられた。今度は大鳥居への延伸ではなく、暫定的に京急蒲田駅の地下駅まで建設。東急電鉄多摩川線を直通させるという計画だ。当初は東急運行、次に京急運行、そして東急運行に戻ったわけだ。これは東急電鉄の意向が強く反映されたといえそうだ。9月5日に東急が国土交通省に説明した計画と同様だ。つまり、蒲蒲線計画について、初めて鉄道会社側から前向きな意思表明があった。

 実は東急電鉄は3年前、2011年11月に「蒲蒲線」への強い関心を示していた。投資家向けの説明会に、2013年の東京メトロ副都心線との直通、2020年の相模鉄道との直通と合わせて、蒲蒲線を紹介している。投資家への好材料になるか、反応を見るという目的だったかもしれない。

 東急がはっきりと蒲蒲線に取り組むと明言した以上、費用負担も覚悟の上だろう。渋谷から多摩川線直通電車を走らせ、渋谷と羽田空港を30分以内で結ぶ。さらに副都心線とも直通させて、その先の西武鉄道、東武東上線からも羽田空港へ直通できるという。

 羽田アクセスについてはJR東日本が新線を発表したばかり。JR東日本の構想は新宿と羽田空港を23分で結ぶと言うから、新宿と渋谷の所要時間約5分を差し引いて、渋谷と羽田空港は18分前後となる。対する東急案は30分以内。所要時間は長く、乗り換えが必要だ。しかし、運賃はJR案より安いだろう。東急案は東急と京急の運賃が加算される。蒲蒲線部分に加算運賃がつくかもしれない。しかし、加算運賃の可能性はJR案も同じ。JR案はりんかい線区間の高額運賃が運賃に響きそうだ。

 渋谷―羽田はJR東日本がやるといっている。そこに東急も対抗心を燃やす。なぜ東急が蒲蒲線に積極的になったか。その理由は、東急にとって「渋谷の価値を高める必要がある」からだ。そしてもうひとつ「多摩田園都市の価値を高める」も関わっている。

 (※新線の所要時間に一部誤記がありました。上記の通り修正いたします)

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